私が愛しているのは美しい魔女様でした。

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私が愛しているのは美しい魔女様でした。

 この馬鹿弟子。  せっかく被害が及ばないように暗示までかけたのに何をしているんだ。  火に炙られながら走ってきた娘は黒い羽根を生やして飛んできた。    そんな魔法を教えた覚えはない。  周りは魔女が仲間を助けに来たと騒いでいる。  弓と剣を持った憲兵が急いでやってくるのなんてあっという間だ。  まさか元王太子妃候補が魔女の弟子だなんて前代未聞だろう。 「ルシアン!」  お前だけでも逃げろ。      そう叫んでも彼女は言う事を聞かない。 「私の名前はラビですわ!」  ご主人様がくれた名前を叫ぶ。  ルシアンだなんて名前はもういらない。   「·····ご主人様が居ないこんな世界は私にとっては地獄でしかないの」 「···········」  彼女は抱き締めてくる。  あの世でもお供をすると彼女は言う。 「·····ラビ···火が····」  火が足元を焼いていく。  綺麗なドレスは燃えていくのが早いだろう。  遠くから彼女の名を呼ぶ母の声が聞こえるが、彼女は····ラビはもう母の声なんて聞くことはない。 「ご主人様       愛してますわ」  こんな世ではなければきっと幸せになれたかもしれない。けれどラビは言う。 「私は貴女に出会えた事が一番の幸せ」だと。  全身に火が移ってもどんなに痛く熱く苦しくてもラビは決して離そうとしなかった。  執念という愛情なのかもしれない。  たった二年間の短い月日でもそんな弟子を持った私も幸せだった。 ----ラビ。  もし、生まれ変われるのなら  また、私に恋をしてくれますか?  民衆が見守る中で私達は来世を願った。    
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