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出会ったのは綺麗な魔女様でした
無理です。
その一言から全ては始まりました。
公爵令嬢と言う肩書きでお茶会に出るというプレッシャーと親が決めた婚約者に愛想を振りまかなければならない苦痛。
親の利益の為だけに女なんて人権はないに等しいのではないでしょうか。
私は男の人が昔から苦手です。
生意気で口汚くて下品で意地悪。
そんな男の人に魅力を感じませんでした。
けれど、私は誰にもそれを打ち明けられませんでした。
「·····お前は可愛げがない女だな」
夜会で大勢の前で婚約者に罵倒をされました。婚約破棄でもしたいのでしょうか。
是非とも婚約破棄をお願いしたいです。
私も貴方のことが嫌いです。
両親には「婚約者に気を使え」「家を潰す気か」「全ては家の為だ」と言われ続けます。
私の事なんて何一つ考えてくれません。
愛してくれた事なんてあったのでしょうか?
それがこの世に生まれた女の運命だと言うなら
私は自らその運命に逆らってみせる。
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少し大きめのバッグ一つと僅かな小遣いをもって屋敷を飛び出して。
荷馬車の持ち主にお金をを渡して行けるところまで乗せてもらって辿り着いた場所は大きな森。
こんな場所に降ろされるなんて思いもよりませんでした。
ここの森を抜けないと次の町に辿り着けないと荷馬車の持ち主はおっしゃいます。
「ここに住むと言われている魔女にでも会えば泊めてもらえるんじゃないか」
なんて心無いことを言われて荷馬車は行ってしまわれました。
魔女なんて····。
悪事を働くと言われている魔女が多い時代にそんなものに会えば何をされるか分かったものではありません。
だけど、戻るにしても何も無い道をひたすら歩く自信なんてないし、道中に言われたのは人攫いも頻繁に見られるとの事でした。
それならばまだ遭遇確率の低い魔王のいるかもしれない森を抜けた方が遥かにマシです。
薄暗い少し不気味な森だと思っていたのに、途中から見たことのない綺麗な桃色の花を咲かせた木々達が立ち並んでおりました
あれ?あの荷馬車の主。そんな事言っていませんでしたわ。
そんな事を考えながらも美しい木々の間を歩いて行きました。
けれど、感動をしていたのはほんの僅かな間だけでした。
行けども行けども見えるのは桃色の景色ばかり。
他の景色なんて何処にも見えず、まるで花に攫われたかのようでした。
お腹も空いてきました。
おかしいなぁ。
予定では既に町に辿り着いて荷馬車の主から聞いた従業員募集中のパン屋に行く予定でしたのに。
世間知らずが仇となりました。
本当にこのまま突き進めば次の町が見えて来るのでしょうか?
上を見あげても桃色の木々で覆われて空が見えません。
今が昼なのか夜なのか分からない森の中に一人ぼっち。お腹も空いて喉もからから。
家出なんてしなかった方が良かったのかもしれないと、今更になって己の愚行に後悔しつつありました。
けれど····
「あんな場所にいるくらいならここで死んだ方がマシだわ····」
己にとって地獄の様な生活が一生続くような事は耐えられない
溜まった涙を拭って出口を目指して再び歩き出そうとした時でした。
とても美味しそうなスープの香り。
空腹が続いていたせいでフラフラとその匂いがする方へと勝手に足が進んで行きました。
小さいけれど色んな花が飾られたまるで花屋さんの様な見た目のお家の煙突から美味しそうな匂いが出ていました。
お腹がすいていたあまりそのお家の小窓から顔を覗かせてしまいました。
そこには真っ黒い服を着た人が大きな鍋を大きなヘラで掻き回している姿でした。
この森には魔女が居ると、いうのは彼女の事なのでしょうか?
悪い魔女は人を食べると昔、メイド達が私を寝かしつける為にそんな事を言っていた事を思い出しました。
「·····そんな所に突っ立ってないで中に入ってきたら?」
窓越しで魔女が話しかけてきました。
「こんな所に人間なんて珍しいねぇ···」
腹が空いているだろう。
魔女様は振り向いて食事に誘ってくれました。
「·······好きです」
「は?」
どストライクの魔女様に一目惚れをしました。
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