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魔女様に恋する乙女は無限大
「魔女様ー」
変な女を拾った。
ウェーブのかかった綺麗な金髪のウサギみたいな小さな可愛らしい娘。
珍しくソメイの森に迷い込んだ人間がいると思えば家の小窓を覗かせて腹を空かせているのが分かった。
話しかければ「好きです」と、懐かれた。
何なんだコイツは?
娘は何処かのご令嬢のようだ。
何でも家出をしてきたとの事。
そんな面倒事はゴメンだ。
ただでさえ魔女狩りがお盛んな人間が溢れ返っているのに、こんな女を傍に置けば裁判にかけられて拷問されて処刑台待っしくだ。
「魔女様ってば」
「お前、いつまでここにいるんだよ?」
「魔女様が振り向くまでですわ」
早く家へ帰れ。
HOUSE
そう何度も言っているのに目の前の娘は全くと言っていい程、聞き入れてくれない。
好き好きアピールは人間の求愛行動なのだろうか。
「お前は私が人を食らう魔女だったらどうするのよ?」
「もし、魔女様が人喰いなら私は初めに食べられているはずです」
まぁ、確かに。
「それに食べられるより喰べられたいですわ」
「貴族令嬢のお嬢さんの言葉とは思えないわね」
彼女の境遇は既に知っている。
勝手にベラベラと話していたからだ。
自由気ままな私ら魔女と違い、貴族は貴族で色々な縛りがある様で生きずらそうな世界だなと、思った。
「魔女様~」
娘は一目惚れとかで私の事を慕う。
ソメイの森に迷い込んだから#素質__・__#はあるのだろう。
帰りたがらないし、勝手に家事をやってくれてくれるし。
まぁ、#魔力__・__#を帯びている人間と言うのと最近のこの国では珍しい事だ。
先祖に魔術師がいたのだろう。
彼女はきっと色濃くそれを受け継いでしまったようだ。
これも運命と言う奴なのだろうか。
-------
「ラビ」
それが娘につけた名前だ。
魔女というのは本来新名を明かすことはない。
元の名前は保管して隠しておくのが習わしだ。
ここにいる。仕事すると言う彼女を何度も追い返しても森が彼女を導いてくる。
素質があるとは言ったが、まさかここまで森に歓迎されているのは珍しい事だ。
森が歓迎しているなら無碍には出来ない。
暫くここに置くことになり早三ヶ月。
「ご主人様。お掃除終わりましたわ」
「褒めてくださいまし」と、頭を持ってくるラビにたかが掃除で褒美はやらんと言えば不服そうな顔をした。
「褒められたいなら魔法の一つでも自力で作り出す事ね」
「では、基礎を教えてくださいませ!」
基礎を始める前に家の雑用を先ずは出来るようになってからだ。
いい所のお嬢さんなせいか、勉学や花嫁修業はできても掃除洗濯炊事は下の下である。
バケツはひっくり返すわ鍋は焦がすわ本棚は倒すわ花瓶は割るわとこの三ヶ月間で散々な目に合わされた。
それでも追い出さないだけまだ優しいと思うのだが、この娘ときたら·····
「ご主人様のいけずぅうう」
そう言うが、負けず嫌いな性格なのだろう。二ヶ月後には料理以外の家事はあらかた出来るようになってきていた。
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