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素質のある弟子と流行する魔女狩り
私は要領の悪いと娘だと思っていました。
両親も家庭教師も私の事をいつも叱り付けて出来が悪いとおっしゃるくらいだからそうなんだと思っていました。
「お前、物覚えがいいじゃないの」
薬草の種類や山菜、毒キノコの見分け方。
様々な占いや基礎のおまじない、精霊や妖精や悪魔についてご主人様は私に教えてくれました。
出来が悪い。要領が悪いと言われ続けていたけれど、ご主人様はその逆で私を褒めてくれました。
ご主人様曰く。
「出来の悪い奴に嘘ついてどうすんのよ」
ご主人様は決して嘘をつかない。
だから私も嬉しくて期待に応えられるようにめきめきと魔術に関する勉強をしました。
ご主人様が外の話を教えてくれました。
両親と婚約者がまだ私を探しているらしいです。
「帰りたいとは思わないの?」
ご主人様はそんな言葉を私にかけます。
親元から離れた私にご主人様が心配してくれているのが分かりました。
けれど私は
「私はご主人様の傍にいたいのです」
熟成されたワインの様な紅く美しい髪、マリーゴールドの様な金色の瞳が猫っぽい。
知的な顔立ちは美しく、こんな素敵な女性の傍にいられるだけで私は癒されているのです
あんな娘を道具としか見てない両親よりも婚約者を虐げるような男の所にいるよりも遥かにここの生活の方が幸せです。
ご主人様は私に色んな事を教えてくれるようになりました。
こんな充実した生活はここでないと得られないものばかりだったのです。
私が正直にそう答えるとご主人様は笑いながら
「お前は純粋な良い子ね」
だから精霊達に好かれるのねって言われました。
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「町に潜んでいた魔女が次々と魔女狩りの被害にあっている」
そう言うのはご主人様の同胞の魔女様でした。ご主人様に気をつけるように警告しに来たとの事です。
「最近、聖女が現れて活発的に活動を始めたようよ」
隠れている魔女を炙り出して次々と処刑台に送っているらしい。
この森も今はソメイが隠してくれているおかげで居場所がバレずに住んでいますが、いつ見破られるか分かったものではありません。
早いうちにここから出て別の住処を探す方が安全ではありますが
「···私は此処を気に入っているからねぇ」
ご主人様は美しい木々が生えるこの森から離れる気はないようです。
何かあった場合、ご主人様は私だけは助かると仰っていました。
きっとその理由に私の家柄もあるのでしょう。
「心配しなくてもいい」
いいえ、とても心配です。
私は貴女が心配なのです。
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