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私の記憶はこの二年間が全てです。
目が覚めれば見た事のある天井でした。
周りにいるのは見た事のある顔です。
母は泣き、父は蔑んだ目で私を見ています。
私は
二年間の間、恐ろしい魔女に捕まって監禁されていたとの事でした
私が居ない二年間の間に王太子との婚約は破棄され、代わりに私の妹が王太子妃に選ばれておりました。
---正直ホッとしている自分がいます。
要領の悪い私よりも妹が王太子妃になってくれたのですから。
私を監禁していた魔女は城の地下牢にいると言います。
明日の昼の教会の鐘が鳴る時間に撃ち弓の火刑に処されるとの事でした。
「監禁していた魔女の最後を見届けに行こう」
と、父は言います。
そんな悪趣味はないと言いましたが父は私を睨み付けました。
何故でしょう?
あれだけ怖かった父が
どうしても小物にしか見えません。
空を眺めていれば何かが見えました。
空を飛ぶのは蝶々の様な羽を生やした小さな人間。
妖精なんて初めて見ましたと、私が思っていましたが、初めてと言うような感覚ではありません。
妖精達は私に何か話しかけてきます。
まるで何かを必死に伝える様に。
その意味を知る事は今の私には分かりませんでした。
--------
次の日の昼前に公開処刑として広場に民衆が集まって来ました。
その中で私も半ば強制的に連れていかれ目の前に木に縛られ立たされた私を誘拐監禁していたと言う魔女を見ます。
拷問の痕でしょう顔は半分火傷で醜く爛れていました。
「·············」
そこで私と魔女の目があいました。
魔女は
私に向かって微笑んでいました。
魔女の周りにいる妖精と私の傍にいる妖精。
空に香る花の香り。
「················ま·····」
少しづつ思い出される記憶。
ご主人様に暗示をかけられる前に飲んだのは追憶の花の蜜。
きっとご主人様は私の記憶を消してくるだろうと分かっておりました。
だから、私は記憶を取り戻せる為にその蜜を飲んでいました。
ご主人様の周りに沢山の油が撒かれます。
ご主人様の罪名が大声で叫ばれました。
悪魔と契りを交わした魔女であり、王太子の元婚約者を誘拐し監禁していたとした罪。
よってここで火刑に処すと·····
民衆から少し遠くから見えるのは元婚約者と私の代わりに嫁いだ妹。
その隣にいるのは聖女でしょう。
あんなのが聖女と言うのなら
ご主人様の周りにいる妖精達が聖女の味方をするはずでしょう。
執行人が松明を持ちご主人様に近付いた時に私は行動にうつしました。
「ルシアン!?」
母の声なんて私の耳には入りません。
ご主人様の周りにある油の撒かれた枯れ木に松明の火がボッと移った時です。
私はご主人様の元へと走りました。
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