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そうされながら、いつの間にかカットソーの裾から入り込んでいた手に、下着越しに胸を掬われる。先端の場所を探し当てられ、上から押し込むようにされた。
「っ!」
直接触れられたわけでもないのに、走った刺激の大きさに、腰が浮く。
「そんなに感じる?」
尋ねてくる低い声には、どこか楽しそうな響きが混ざっている。親指が繰り返し、胸の先をブラ越しに擦った。
「……っ、っ……、ぅ」
彼が言った通り、自分でも思いがけないぐらいに、これだけの触れられ方で感じてしまっている。この先、されるであろうことを現実にされたら、いったいどうなってしまうのか──
そこまで考えて、私は自分が、彼を受け入れようとしていることに気づく。
突然の事態に驚き戸惑ってはいるけど、嫌だとは思っていないと気づいた。
手のひら全体で胸を包んだ状態で、倫之が聞いてきた。
「このまま、進めていいのか? 抵抗しないなら最後まで止められないぞ」
先ほどと一転して、声には不安がにじんでいる。
瞑ってしまっていた目を開けると、今さらながらという感じで、バツの悪さを浮かべる顔。
さっきまであんなに強引だったくせに。
「そのつもりだったんじゃないの?」
「っ」
私の指摘に、ますます深く、顔に罪悪感が刻まれる。
けれど、私を見下ろす目の奥には、熱が浮かんでいて──見間違えようのないほどに、男として女を求める目。
その対象が私だという事実に、異様に恥ずかしくなりながらも、胸のうちが震えた。
「……いいから」
「え」
「進めて、いいから。止めないで」
恥ずかしさをこらえて伝えると、彼は喉をごくりと動かした。
「本当に?」
「うん」
「──わかった」
小さく息を吐いた倫之の、もう片方の手が、私の頬を包む。
ふ、と口の端が柔らかく上がった。
「由梨」
頬を撫でられながらの呼びかけに、心臓が疼いた。
そんな──優しく、少し切ない声で、愛おしさを抑えるように呼ばれたことはない。ましてやこんな行為のさなかに。
今まで付き合った相手は、乱暴にこそしなかったけれど、それほど優しいわけでもなかった。たいていの場合、自分の欲望を優先させるように事を進めて、私がもう少しゆっくりと訴えても痛がっても、自分が満足するまではほとんど気遣ってくれなかった。
けれど今の倫之は。
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