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「ん……もっとされたい。だから、遠慮しないで」
「──後悔するなよ」
私の懇願に、一転して不穏な声音で倫之は応じた。
一瞬ののち、ぐっと、欲望が深く押しつけられる。さっき以上に入るはずはないと思ったのに、私の体は驚くほど自然に、彼をさらなる奥地へといざなった。
そのまま、がつがつと貪るような勢いで、繰り返し最奥が抉られる。経験したことのない深い挿入は、私の知らなかった感覚を呼び起こして、頭を麻痺させていった。
「ふぁ、あっ、激し……っ、深い……」
「おまえがしてって言ったんだろ──ああ、いいなその顔」
「やぁん! そこっ……あぁ、いいっ、あぁっ」
「由梨の感じてる顔、可愛い……っ、好きだよ、由梨。好きだ」
「あっ、とも、ゆきっ……好き、わたしも、好きぃっ」
私の反応に、倫之は本当に嬉しそうな笑みを浮かべた。腰の動きをさらに速めながら。
「や、ぁっ──だめ、もうっ──イっちゃう」
「ん、由梨、俺も……もうすぐだから、一緒に」
「ああ、あぁっ、あ────あぁぁぁっ!」
叫んだ瞬間、指の時とは比べ物にならない快感の激しい波に、五感のすべてが一気にさらわれる。
頭の中が完全に真っ白になって、どのぐらい経ったのか……意識がようやく戻ってきた時、頬から目尻にかけての輪郭を、そっと吸うようにキスされていた。
倫之のその仕草で、私は自分が、涙をこぼしていたことに気づいたのだった。
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それから、さらに半年が過ぎた。
「これ、ほんとに似合ってる……?」
「似合ってるって。最初からずっと言ってるだろ」
なんでそんなに不安そうなんだよ、と倫之が苦笑する。
「だって……落ち着かないんだもの」
「そりゃまあ、そうだろ。あのな、俺だっていちおう緊張してんだぞ。わかってる?」
とてもそんなふうには思えない。いや、もちろんいつもよりも真面目な顔つきはしているけれど……それ以外は普段通りの態度、口調に感じる。
控え室の椅子に座ったまま、あらためて倫之を見上げた。
長めの前髪はワックスで撫で付けられて左右に分けられ、眉も少しカットされて整えられている。淡いグレーのタキシードは、白で合うサイズが無かったからなのだけど、ともすれば威圧的に見えかねない肩幅のある長身を柔らかく包んで、彼の印象を和らげながらも精悍さを際立たせていた。
ストレートに言って、非常に格好いい。
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