幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。

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 この一年近く、彼のいろんな面を見て知ってきた私でも、この姿にはいまだにドキドキさせられる。  そのたびに、比べて私ときたら……という思いが抑えられない。精一杯ダイエットに励んでエステにも通ったのだけど、目標とする体重とウエストサイズには届かなかった。決めていたドレスを着るのに支障はないとはいえ、上がオフショルダータイプだから、背中とかがどうしても気になる。式場スタッフの人や、倫之は「大丈夫」と言ってくれているけど。  知らず、またうつむいて考え込んでしまっていた私の顔を、倫之が頬を挟んで上げさせた。 「馬鹿、そんな景気の悪い顔するな。今日の主役だろ」 「……でも」 「由梨。おまえ、俺と結婚するの嫌か?」 「え。そ、そんなわけないでしょ」 「だったらもっと、嬉しそうな、幸せそうな顔してくれよ。俺は由梨と結婚できることになってから、ずっと、最高に嬉しいんだから」 「……倫之」  にっこりと、満面に笑みを浮かべる倫之は、この上なく輝いて見えた。私にはもったいないぐらいに。  そう考えた途端、こつんと、ベールを避けておでこを叩かれる。 「こら、また余計なこと考えただろ。自分にはもったいないとか何とか」 「…………」 「そういうこと考える必要ないって、何回言ったらわかる? 俺が、由梨を好きで選んだんだよ。それ以外に気になることがあるのか?」  何気なく言われる、自信に満ちあふれた台詞には、何度聞かされてもあまり慣れてこない。今回も思わず目を見開いていると。 「言っただろ、プロポーズの時。死ぬまで幸せでいさせるからって。絶対に、由梨を世界一幸せにしてみせる。子供も一緒に」  ぎゅっと手を握りしめられた後、お互い、視線が自然に私のお腹へと向いた。まだ膨らみの目立たないそこには、新しい命が宿っている。当初「一年後ぐらいに」と予想していたよりも早く結婚することになったのは、そういうわけだった。  ──そうだ、私の実家に挨拶に来た時にも、倫之は言ってくれた。『由梨さんと子供を必ず幸せにします』と両親に、今のように真摯な眼差しと声で。そして、倫之自身のご両親にも同じように。  その約束を、彼が違えることはきっと無い。そう信じられる。  だったら、何を不安に思う必要が、怖がる必要があるだろう? 私は自分自身に問うた。
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