幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。

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 同年代の友達は、ほとんどが結婚しているか、交際相手がいる。仕事に生きるから、と独身を貫くつもりの人もいるけど、その子はめちゃくちゃ頭が良くて外交官にまでなっているから、そういう選択肢もありだろう。  私みたいな、小さな会計事務所の事務担当でしかない身の上では、仕事に生きるとまでは考えようがない。  送られてきていた、同窓会のお知らせを思い出す。  卒業以来会えていない人もいるから、行きたい気持ちはある。でもすでに三十過ぎ、結婚の話題を誰も出さないはずがないし、こちらに話を振られる可能性だって十分ある。  その時、正直にフリーだと答えるのは、なんだか気が引ける。有り体に言ってしまえば、少し憂鬱だった。  はあ、と吐いたため息の音が、意外に大きかったらしい。コーヒーをすすっていた倫之がこちらを見た。 「なんだ、やっぱり仕事大変なのか」 「そうじゃない」 「じゃ何」 「……同窓会のお知らせ、来てた?」  視線をちょっとの間さまよわせた後、答えが返ってくる。 「そういや来てたな、さっき。一回読んだだけで放ってあるけど」 「私も」 「卒業十五年記念とか、なんか派手に書いてたよな」  倫之の言葉で、つまり一人暮らしも十五年目になるのだ、ということに気づく。  十五年。  今年三十三歳になるのに、結婚の予定どころか彼氏もいないなんて、どうなんだろう……と我ながら思ってしまう。  自分でもそう感じるのだから、周りにはもっと強く思う人がいるだろう。たとえば両親とか。  大学時代と最初の会社にいる時期で、交際経験は二回ある。それなりに踏み込んだ付き合いをしていたものの、どちらの人も、親に紹介する段階にまでは至らなかった。  だから両親は私を、男性に縁の薄い娘だと思っているだろう。お見合いを強制されたことは今までにないけど、もしかしたら、近い将来にと考えてはいるかもしれない。  お見合いに拒否反応があるわけじゃないけど、人からの紹介となると、相手を気に入らなくても断りにくさがつきまとう。周囲に流されるように結婚まで至ってしまうのはさすがに嫌だ。 「で、そのお知らせがどうかした?」  倫之の質問に、私はすぐに答えを返すことを躊躇した。  幼なじみとはいえ、男のこいつに、こういう悩みを打ち明けるのはいささか抵抗がある。笑ったりはされなくても、同情とか哀れみの目で見られるのも避けたい。
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