幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。

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「……正直、迷ってて、行くかどうか」  それでも結局は、気持ちを口に出していた。 「なんで」 「私ら、今年で三十三じゃない。結婚してる人の方がたぶん多いぐらいでしょ? この歳で、予定どころか相手もいないなんて正直に言うの、気持ちの上で憚られるじゃない」 「そうか?」  頬杖をついた姿勢でじっと顔を見つめられて、不覚にもドキッとした。  倫之は昔から、無駄に見た目がいい。子供の頃は女の子よりも可愛いと言われていたし、中学から高校にかけてのイケメンへの移行ぶりは、私ですら目を見張るものがあった。  百八十センチ超えの長身は今も変わらずで、カフェの小さなテーブルの下で狭そうに、日本人らしからぬ長い足を組んでいる。  外見で目立つ上に、成績が良く努力家で、人当たりも悪くないとなれば、当然モテる。特に高校時代のモテっぷりは凄かった。バレンタインには女子が教室の外にまで列を成し、卒業式当日には告白したい子の呼び出しが夕方まで続いた、という話を伝え聞いた。  その中の何人かとは付き合ってもいたらしいけど、クラスが違っていたし、よくは知らない。  ともあれ、客観的に見てこいつの容姿が注目に値するのは確かだった。さらに、就職してからは仕事をする中でつけたらしい自信がみなぎっていて、すれ違いざまに思わず振り返るレベル。  たまに帰省が重なって見かけたり話したりする時に、一瞬だけど心臓が跳ね上がって緊張してしまう。今みたいに。 「……そりゃあんたは男だから気にならないかもしれないけど、女にはやっぱ、暗黙の適齢期ってもんがあるのよ。出産とか考えるなら特に、三十五超えると婚活でかなり不利だし。そういうこと考えたら、この歳で彼氏すらいないとかって」 「婚活すんの?」  あんまり聞こえが良くない、と続けようとした言葉を、倫之の割り込みで断ち切られる。 「するなら今のうちでないと、とは思ってる。本音を言えばちょっと面倒だけど──お金かかるし」  婚活パーティに参加しても結婚相談所に登録しても、すぐに気の合いそうな相手が見つかるとは限らない。さらに、結婚して良いと思える相手ともなれば、何回、擬似的なお見合いを繰り返さなければいけないだろうか。
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