きみと好きな人が

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 あ。これは夢だって、すぐ気づいた。  どこまでも続いている真っ白な一本道に。  両端には宇宙の星々が夜の川みたいに流れているんだもん。  そして何より、  「どうしてここにいるの?」  彼がいたからだ。  「お前と、少し話したくてな」  「良いの?」  「あぁ。今日だけ、特別にな」  それからぽつり、ぽつりと。  ゆっくり歩きながら、昔話に花を咲かせた。  元気そうだなとか、まぁねとか。  今何やってるとか、今卒論頑張ってるよとか。  ほんとに、他愛ない。  味気のない話ばかりだ。  まぁお互い、しゃべるの上手くない方だから仕方ないのかもしれないけど。  会話が途切れ、次は何を話そうか迷った。  過去のこと? うーん、今更な気がする……  頭を悩ましていたところ、  「そういえばお前、今度結婚するんだな」  私はハッと目を見開いた。  けど、すぐにストンと腑に落ちた。  あぁ、やっぱり知ってたんじゃんって。  さっきの会話だって、本当は私が今まで歩いてきた道を知ってたくせに。  わざわざ聞くなんて。  「何だ、何がおかしい」  「別に。ただ、本当に不器用だなって」  あなたも、わたしも。  だからきっと、  「わたし。あなたのこと、好きだったんだよ。知ってた?」  「……あぁ、知ってた」  少しだけ離れていた、年齢の差。  ただただ、追いつきたくて、あなたに認めてもらいたくて。  ひたすら走っていた、あの頃が懐かしい。  「本当よ」  「それも、知ってる」  でしょうね、バレバレだっただろうから。  でもきっとあなたは、どのみちフッていた。  「良いヤツっぽいな、お前の結婚相手」  「当たり前でしょー」  全然違うタイプの、最愛の人。  わたしを置いていったりしない人だよ。  「      」  名前を呼ばれて、足を止める。  「何?」  「幸せに、なれよ」  あなたが、それ言う?  ずるいよ……まさか、贈られるなんて思わなかった。  きっと昔のわたしなら、何でそんなこと言うのって泣きながら怒鳴って逃げてたけど。  「もちろん」  だから、ちゃんと見ててねって。  とびきりの笑顔を見せた。  あの夢から数ヵ月後。  卒論は見事合格、無事卒業も出来た。  そして。  「じゃあ、わたし。行くね」  引き出しに閉まっておいてた、大事な写真。  そこには幼い頃の私と、彼がいた。  想いを伝える前に逝っちゃって……  本当に、ズルい人。  どうせ、今でも見てるんでしょ?  だったら見ててね。  今日のわたしの晴れ姿を。  あの人のもとへ歩いていくわたしを。  これからの、わたしの歩く道を。
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