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大海へ帰った彼らはきっと、さよならの言葉もなく別々の方向へ泳ぎ出すのだろう。
それが彼らの人生だ。次はいつ会えるかわからないから、約束もきっとしない。
久しぶりの孤独はどんな温度だろう。今まで通りにうまく泳げるだろうか。
そんなことは杞憂だと、生物の本能が告げている。
彼らはまた、名もなきウミガメとして大海を生きる。
この広い広い海のどこかに、記憶を共有したたった一人の相手がいることを支えにして。
あいつがいるから僕も大丈夫だって、根拠のない感情だけをお守りにして。
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