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白靄(しろもや)に包まれた空間だった。 目覚めたロイは周囲を見渡す。 だが、白い霧に包まれた空間は全てを覆い隠していた。 ロイは複雑な感情で、首元のロケットペンダントを開く。 そこには、1枚の写真が納められていた。 艶やかな金色の長髪をなびかせた、一人の美しい女性。 ロイはロケットを閉じ、気を落ち着かせるようにゆっくりと息を吐く。 その時だ。 「また会えたね、ロイ」 白い霧が少しずつ開けていく。 そして、眼前にみえる一人の女性に、ロイの視線は釘付けになった。 金色の長髪を揺らし、優し気な笑顔を浮かべた彼女はまさしくロケットに映っていた女性だった。 20年前、この世を去った、ロイの最愛の人、エマ。 「エマ」 ロイはふらふらと歩みよると、静かにエマと抱擁を交わした。 成功への喜びと、解き明かすべき謎をその胸に宿しながら。
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