ファッションインフルエンサー

アパレルメーカーへ面接

　女性社員さんがノートPCに手を伸ばした指の、綺麗に塗られたネイルが蛍光灯の光で更に輝いた。
　カチャカチャとキーボードを打つ音が静かな室内へ響く。暫くしてから「ちょっと見て頂けますか」と、促された。椅子から身を起こし、そちらへ向かう。ノートPCを見せてくれた。そこには綺麗なブラウン色に染めた髪をしっかりまとめて、濃いほどのメイクをした三十五歳くらいの女性が立っていた。少し体型はふくよかな気がするけれど、気のせいだろうか。けれども顔の作りは目を奪われるほどの、麗人だ。
「この方が、我が社で一番の人気インフルエンサーです」
「え？」
　思わず頓狂な声が出た。我ながら失礼だと思い、ハッとする。今までSNSで目にしてきたインフルエンサーは痩躯な人ばかりだった。
「店員でもSNSをして頂いている方はいます。その中でもフォロワー数が一番多いですね。何故彼女が輝いたのか、お教えしましょう」