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お腹がデップリとしたおじさんとギラギラおばさんは、国から出る多額の金銭目当ての詐欺師で、金が手に入った途端私たちを残して消えてしまった。
また私たちは親から闇の中に捨てられた命となった。
おじさんとおばさんは、またどこかで同じ手口の詐欺を繰り返すのだろう。
残された私たちは、子供三人だけで生活をしなければならないが、それは到底無理なな話しだ。
「お腹が空いた」
もう施設に出戻るしかないが、引き取った親からの毎月の寄付金がなくなったり、過密になったと政治家から締め上げられたりするので、自然と職員からの風当たりが強くなる。
施設には帰りたくない。
アパートの部屋のなかで、私はどうすれば良いのか考えているうちに、息が苦しくなり突然目の前が暗くなった。
私たちは何も悪いことなどしていないのに、なぜこんな罰を受けているのだろう。
誰かたすけて
私は、誰か助けてと叫んでいた。
弟と妹は泣きじゃくり、私に強く抱きついている。
「正義の味方」
こんな夜更けに、コンビニの真向かいのアパートで尋常ではない声で子供が泣いている。
コンビニで買い物をしていた正広が、子供の声に気が付いた。
なんかあったとやね、こげなときは無理やりでも泣き声がする部屋に入らんといかんばい。
緊急事態やけん、ドアを蹴り破ってでも中に入ろう、110番もしたほうがよかね。
そう決断し部屋の中に入ったのは、コンビニ帰りの大学生、東正広だった。
部屋のドアは開いていて、すんなり中に入ることが出来た。
部屋の中は綺麗に整理整頓されている。
正広は、もっと乱雑な部屋だと想像していた。
部屋の片隅で声を枯らしながら、助けて下さいと弱った声を出している子供がいた。
その子供に幼い男の子と女の子がすがりつき、異様な声で泣きじゃくっている。
人は絶望すると、この声を出すのだろうと思えた。
恐怖さえ感じる光景だが正広は優しく、もう大丈夫やけんね助けてにきたばい、そう話しかけ笑顔をみせた。
大人の笑顔を見て安心したのだろう、子供がおじさん私たちは二日間水しか飲んでいません、お腹が空いていますと正宏が持っているコンビニの袋を見た。
「よし、わかった」
お菓子が多く入っとるばってん、好きなだけ食べてよかぞ、足りんかったら一緒に食べたい物をコンビニに買いに行こう。
それと、俺のことは兄貴と呼んでくれんね、まだ大学三年生やけんピチピチしとるばい。
軽口を叩きながら子供たちの様子を見てみると、目は落ち窪み唇が荒れていて、ガリガリに痩せていた。
餓死する寸前のようだ。
親が事故にでも巻き込まれて、帰ってこれんとやなかろうか。
子供たちの食事がすんだタイミングで、詳しく聞いてみよう。
お菓子を食べ満腹そうにしている子供たちに、お父さんとお母さんはなんばしょーと、正宏がそうたずねると、私たちはそれぞれ別々の施設で暮らしてい
て、知らないおじさんとおばさんが迎えにきて、家族になりました。
おじさんとおばさんは、私たち子供が住む部屋を借りてくれて、朝ごはんと夕ごはんを配達で頼んでくれていました。
弟と妹のオムツを沢山買ってくれたので、頻繁に交換できました。
小学校に行きたかったんだけど、弟と妹の世話をしなくちゃいけなかったので、行っていません。
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