釈放される篭の鳥

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「小学校は何年生になるとね」 「四年生です、兄貴」 犯罪の臭いがする、この子供たちは何らかの事件に巻き込まれとる可能性が高かばい。 多分いま流行りの補助金詐欺やろうね。 「なして二日間も施設に戻らんかったと」 施設に出戻ると、躾がなっていなかったと四六時中皆の前で殴られるようになるからです。 「見せしめにされるとやね、それはもう躾やなか虐待ばい」 絶対許せん、こげん幼く健気な命になんばするとや、あと15年もすれば子供たちは大人になる、その時に虐待の仕返しをされても、一言の文句も言えんめい。 子供たちをだしに使い、置き去りにした詐欺師も絶対に許せん、人間の命を軽視しとる。 ピンポーン 「警察です、子供の悲鳴が聞こえると110番通報がありました、ドアを開けて下さい」 「はーい、110番通報をしたのは僕です、いまドアを開けます」 そう返事をし正宏は玄関のドアを開けに行った。 子供たちは正宏の背中に隠れて、兄貴怖いよと言いながらついてくる。 「大丈夫、警察官は正義の味方やけんね」 ドアを開けると警察官は一人きりで、玄関の前にいた。 連れがいないとやね、そんな事を考えていると警察官は玄関の外から室内や子供たちを観察し、特に異常はありませんね、よろしければ110番通報をした携帯の番号を教えてもらえませんかと尋ねてきた。 正宏は躊躇なく番号を伝え、警察官は番号をセンターに問い合わせて身元確認をした。 正宏は警察官に、あなたは地検特捜部部長の御子息、東正宏さんですかと質問された。 「はい、東神明の息子です」 正宏は財布から車の運転免許証を出して、警察官に渡した。 地検特捜部部長の御子息には手出しをせず、現場から速やかに立ち去るようにと、センターに問い合わせしたときに、警察官に指示が出ていた。 面倒臭そうに警察官は身元確認を運転免許証で再度行う素振りだけ見せて、車の運転免許証を正宏に返し、御協力ありがとうございましたと御礼の言葉を口にして、帰って行った。 ちょっとまって、子供たちはどけんするとね。 あっさりと帰って行った警察官に、違和感を覚えた正宏、この感覚は以前経験したことがあった。 父さんが関係している事件に巻き込まれた可能性が高いと直感した。 その直後、父からラインがあり、深入りしないで家に帰ってきなさい、詳細は事件の解決後に説明すると書かれていた。  子供たちを残しては帰れませんと返信する間もなく、子供たちを新しい施設の職員が迎えにきた。 私たちは、証人保護プログラムの者です。 子供たちはある大掛かりな犯罪に巻き込まれています、警察から連絡を受けてきました。 子供たちはもう安全ですよ。 信用出来そうな面持ちの二人組の男性、服を着ていても鍛練されていると分かる体格をしている。
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