釈放される篭の鳥

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証人保護プログラムか、一連の流れが部屋の中を盗聴でもされていたかのように早く完璧に進んでいる。 何か変だ、都合が良すぎる。 正宏は信用出来そうな二人組に、映画で知ったセリフを言ってみた。 「今後、子供たちと面会することは可能ですか」 証人保護プログラムの職員が一瞬戸惑い、人によりますが可能ですよと答えた。 この一瞬の戸惑いを正宏は見逃さなかった。 こいつら偽物やなかね、証人を保護するとやけん過去の人間関係は全て絶ちきるはずたい。 スーツの上からでも鍛え抜かれていると分かる体格、この二人と戦っても勝ち目はなか、隙を突いて逃げたかばってん子供たちがいる、どげんしよう 父さんに緊急連絡するしかなかばい。 子供のころから決められていた、命がヤバイ状況になったときに父に知らせるワンクリックラインを、偽物の証人保護プログラムの職員に気付かれないように送った。 ラインを受け取った神明の動きは迅速だった。 先ほど帰った警察官に無線が入り、2分もかからずアパートの部屋の入口に到着させた。 アパートを監視していた特捜部の猛者にも神明から連絡がはいり、部屋の入口に到着させた。 応援の警察官も続々と集まり、辺りが騒がしくなっている。 その様子に、偽の証人保護プログラムの職員二人は窓を開け外を見渡し、人質は4人いるからなと言葉を吐き捨て、おもむろに拳銃を抜き出し一発発砲してから部屋に立て篭った。 辺りに、緊張が走る。 二人は、さっき正宏が出した質問の答え方が間違っていたことに気付き、苦笑いをしている。 正宏に、さすが地検特捜部部長の息子だね、上手に外部と連絡したんだな、御陰で大事件になっちゃったと余裕のある口調で話しかけてきた。 子供たちは正宏がいるので、安心して無邪気に遊んでいる。 この二人はなぜ、僕が地検特捜部の部長の息子だと知っているとやろう。 朧気ながらも、大掛かりな組織犯罪に巻き込まれたと理解し鳥肌が立った正宏だった。 警察庁、国家公安委員会も動いているかも知れない。 こんな場合に芋引いたらいかん、殺されるかも知れんけん鳥肌が立っとるばってん楽しい事ば考えよう。 司法試験予備試験に一発で合格したから、司法試験にも一発で合格して、大学を卒業したら法務省に就職したかばってん、父さんは大学院に進学しろと言うやろうね。 父さんは最終学歴が大卒だったけん、相当苦労したと言いんしゃるもん。 来週は母さんの月命日やけん、父さんと二人で墓参りに行かないとな、帰り道に父さんと母さんが知り合ったビリヤード場で、いつも通りにフオーテイーワンラックゲームをして母さんを偲ぼう。 取り留めのない考えごとをしていると恐怖心が薄れてきた。
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