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よし、正宏は覚悟を決めた。
職員さん、その拳銃は本物ですか玩具のように発射音が軽いと思うんですけど。
正宏は怯えずに、大胆不敵に話しかけた。
いい根性しているな銃を持ってる相手に、本物かどうか君を撃ってみようか。
職員はにっこりと悪い顔で笑い、正宏に拳銃を向けた。
正宏もにっこりと笑い、僕と父の趣味は似ていてポケットビリヤードとクレー射撃なんです、よく二人で出かけるんですよ。
なるほどだから音で分かったのか、色々鋭い突っ込みをするな君は、まぁ親子が仲良くしているのは羨ましいよ。
そう言って拳銃を懐にしまった。
母が亡くなる寸前に、父と僕に仲良く暮らしねと言ったんです、それが遺言で父と僕はお互いを尊重し仲良く暮らしています。
「母親が亡くなったのは最近なのか」
「5年前に交通事故で亡くなりました」
「加害者の運転手に復讐なんて考えるなよ」
「父にも同じことを言われています」
「思慮深い父親なんだな」
俺がさっき発砲したのは、子供たちを救出する計画が失敗した合図なんだ。
懐の拳銃は本物で、一発目の弾だけが空砲だったんだ次の弾からは実弾だ。
拳銃は重いからあまり好きではない、これから俺たちは三十六計に移行する。
三十六計逃げるに如かずと言うことですか。
そうだ、冗談が効いてるだろう。
「これから先の人生、君とは二度と遭うことはないだろう、楽しいお喋りが出来たよ、子供たちのことよろしく頼むな」
そう言って不敵で魅力的な笑顔を見せた。
職員二人は忍者のように、押し入れから天井に登り屋根へと鮮やかに脱出して見せた。
二人はもう暗闇に溶け込んでいるのだろう。
無事に子供たちと部屋から出られて安堵した正宏、外は雨が降っていた。
「正宏、よく頑張ったぞ」
「父さん」
「お前は母さんに似て、直感が鋭いからな」
父の姿を見た正宏は全身を震わせ、怖かったと呟きました。
心配そうに正宏の顔を覗きこむ子供たち、神明が手配したのであろう子供たちのすぐ側に本物の施設の担当者たちが来ていた。
「兄貴、兄貴も私たちを施設に捨てるの、兄貴は私たちを助けにきたのでしょう、そう言ったじない」
その言葉は、正宏の心臓をえぐった。
「兄貴、私は役に立ちますよ、掃除も洗濯も料理もできます一生懸命やります」
切実な声だ、このまま子供たちを施設の担当者に預けたら子供たちは人間を信じられないまま大人になる、それだけは避けた方がよか、ばってんどげんすれば良いとやろうか。
正宏の考えが、声になった。
「子供三人げな到底俺一人では育てきらんばい」
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