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 これは、2階の美月の部屋が物置になったことも悠人に有利に働いた。床板を剥がすための工具や、その中を覗き込むのに必要な非常用ライトなども、押し入れに入っていたのだ。悠人は早速工具とライトを持って物入れ部屋に入り、レンチなどを使って床板を剥がし始めた。  思った通り床の板を一枚はがすと、そこはすぐに床下になっていて、格子状に組まれた土台の下に、1階の天井部分が見えた。もしこの天井が分厚く、ドリルでも使わないと通り抜ける穴が開けられないようなら、悠人も諦めるつもりだったが。幸い天井部分も、それほど頑丈には作られていなかった。逆に、悠人の体格が良くて体重がもっと重かったら、その重さに天井部分が耐えられなかったかもしれないが、ここも悠人の「やせっぽちな体」が幸いしたと言えよう。  悠人は床下の狭い格子部分をくぐるようにして、天井部分へ降りた。天井部分は床下よりも広い間隔で基礎が組まれていて、そこに足を乗せておけば、恐らく「天井を踏み抜く」ことはないだろうと思えた。そして天井は、1階で見上げるとタイル状の長方形の板を組み合わせたような作りになっている。このタイルを上手く剥がせれば、1階に降りられるはず。悠人はタイルの継ぎ目部分をライトで照らしながら、先の尖った工具で時間をかけてカリカリと削り、一枚のタイルを上手く剥がすことに成功した。  慎重にタイルを持ち上げると、思った通り、そこからトイレのドアが見えた。これで、行ける。悠人は押入れから持ってきた、3段ほどの小型の脚立を広げ、それに紐を結び付けて、タイルを剥がした部分から1階へ降ろした。こうすれば、天井から1階の床に「飛び降りる」ようなことをしなくていい。脚立の上に降りればいいのだ。そして部屋に戻る時も、脚立に乗れば身の軽さを生かして天井まで上がれるし、2階に上がってからロープで脚立を引き上げればいい。上手くいくかどうかはやってみればわからなかったが、悠人はここまでの結果を自分で出せたことに、十二分に満足していた。
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