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 1階の間取りは、物入れのすぐ下にあるトイレの左隣に美月の部屋があり、その左が風呂場になっている。その先に台所があるので、風呂場の前に降りると、台所に誰かいたら見つかってしまう。それを考えると、やはり脱衣所に直接降りるのがベストではないかと思われた。脱いだ服を脱衣所に置いておけば、誰も入ってこようとはしないだろう。恐らく自分は、家族たちから「避けられている」のだから。  そこで悠人は、日中の誰もいない時間に天井裏に潜り、台所の天井と、脱衣所の天井に小さな穴を開けた。まず脱衣所に脱いだ服などが置いてないのを確認し、それから台所に誰もいないのを確かめてから、脱衣所に降りれば完璧だ。そう考えて、まず脱衣所の上に穴を開けてから、台所の方にも穴を開け、下の様子が覗けることを確認して、物入れに戻ろうとした時。  玄関の方から「がちゃり」という、ドアが開く音が鈍く響いて来て。続いて、天井の下から「すた、すたっ」と歩く音が聞こえて来た。その音はトイレの横にある、美月の部屋に入っていった。もう姉が学校から帰って来る時間になっていたのかと、悠人は天井に穴を開ける作業に夢中になり過ぎていたことに気付き。しばらく様子を見て、天井裏にいる自分に気付かれぬよう、美月が部屋を出たところで物入れまで戻ろうと考えた。……すると。  少しして美月が部屋のドアを開ける音がして、悠人が物入れに戻ろうかと思った時。美月が、「すぐ隣の部屋」に入っていく音がしたのがわかった。つまり、美月の部屋の隣にある、風呂場の脱衣所へと。
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