3.中学二年の思い出

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 中学二年の春、四回目の転校が決まった。引っ越した先は大きくもなく小さくもない、あまり特徴のない町だった。駅前に新しい商業施設がオープンしたばかりでそこだけが妙に賑わっていたのを覚えている。翌年も多分引っ越すことになりそうだと聞いていた私は、どうせまた転校しちまうんだからと積極的に友人を作る気にもなれずにいた。学校が終わるとまっすぐ家に帰っていたのだが「お友達できないの?」と母から心配されるのが嫌で、本屋で時間を潰してから帰宅するようにした。駅前の商業施設にももちろん書店は入っていたのだが何となくそこに行く気にはなれず、駅とは反対側にある古びた本屋に足繁く通った。駅前でクラスの連中に会うのを避けていた、というのもあるかもしれない。砂利道をしばらく歩いた先にあるその書店は何という店名だったろう。赤い屋根の古びた一軒家で一階が店舗、二階が住居になっていた。店内は何だかいつも薄暗く、客もほとんどいなかったように思う。
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