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ありきたりな転生
目が覚めて。
記憶より低い天井に驚く。
え?
進学した時、一人暮らしを始めた。
”高い天井で広く見えるDK”が売りの。金太郎飴的アパート。
ロフト付き1DK。
閉所恐怖症気味なわたしは。ユニットバスの真上のロフトは荷物置きにしちゃったから。
布団から目覚めた眺めは、通常より高い天井!のはずなんだけど。
・・・いや、これ天井じゃないじゃん。
なんだかふんわりと布が貼ってある感じ?
つ、と斜め上を見れば。
これぞ本当の高い天井だな!っていう豪華な装飾の天井がちゃぁんと見えて。
しかも遠い。
・・・すごく大きな部屋だな。
ええと。
わたし、二段ベッドの下の階に寝てる?・・・わけないな。
これが二段ベッドだっていうのなら、上の段へ行くためには。通常のはしごふたつ分の長さがいるよ、うん。
これって、まさかあれ?
憧れの天蓋付きベッド!
ぱちぱちと瞬き。
・・・見えてるものは消えなかった。
んっ!と腹筋で!
起き上が・・・れない?
なんて筋力のない体だよ。
仕方なく足を振り上げて。反動つけて起き上がる。よっ!と。
淑女のすることではないわ!って一瞬ひとり突っ込みしたけど無視。
なんだ、ここは。
広い部屋には豪華な鏡台!
本棚。勉強机?
ベッドサイドの小さなテーブルも椅子も!
なんって高価そうな家具!ピカピカのごてごてな飾りがたくさんついてる。
・・・壊したら大変だよ。
このベッドだって相当高価そうじゃん!
わたしが寝てても良かったのか?
つい振り向いて、枕を確認。
さすさす。
・・・良かったぁ。よだれ垂らしてない!
って!!
この白い手はわたしの手じゃない!
日に焼けてない!そんな馬鹿な!
薄暗いせいで見間違えてる?
ほんのり明るい窓のほう、つい見る。
うわぁ。
カーテンもほら、あれだよあれ。
従姉の結婚式。荘厳な、とかいう謳い文句の式場にあった・・・カバーがついたみたいな二重のカーテン。
その上、あれよりもっと高価そう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・これ、ってまさかの転生!?
きょろきょろ見やって。
自分の記憶もごそごそやって。
まだ・・・なんかよくわかんないけど。
「お父様」とか話してるわたし?の声、発見!
短大生のわたしの思い出しかない中に「お休みなさいませ、お嬢様」ってメイドの声も発見!!
ええっと。
・・・でもまだ、誰の顔も、名前も思い出せないや。
不安になりつつも・・・。
ふ。
ふっふふふ。
なんだか気分は高揚してくる。
やったぁぁぁぁあ!!
・・・って叫ぶのだけは我慢した。
ぎゅって握りこぶし作って振り上げる。
変わった女だと気にいられるお話の可能性もあるけど。
取り合えず家の者に白い目で見られる事態は避けたい。
こんだけ豪華な部屋だもん。明らかに高位貴族令嬢!だよね、わたし。
転生。
転生だ!
んふ、ふふふふ。
喜んでベッドを出て。
静かに、でも鏡台へ飛んで行って。のぞき込む。
碧い瞳か!
紅い瞳か。
紫か!
ブロンドか。
銀髪か!
ピンクブロンド・・・はヒロインの特権だっけ。
くっそう。好きな髪色なんだけどなぁ。
いやいや、高位貴族でヒロイン!そんなお話もあった・・・気がする。
さぁ、わたしの姿は如何に!
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