4.突然の展開に

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4.突然の展開に

 ◇  ──今夜の宴席で、新しい夫候補を探す!!──  決意を胸に挑んだ夜会で、私はエスコート役のロデイル殿下と囁き合っていた。  意外にも、殿下はミュゼット嬢を誘わなかった。  今夜は上位貴族の集まりだから、男爵家では資格がない、というのがその理由だそうだけど、王子が同伴すればゴリ押せるんじゃないの?  先ほどから他の貴族たちに、殿下と肩を寄せて会話してる姿を見られている。  扇で口元を隠してヒソヒソ話をしているだけだけど、端からみたら親密そうに……誤解されたら困るなぁ。  まさか私が現婚約者(ロデイル殿下)に、新しい夫候補を相談してるなんて想像もしてないだろうから。  ううっ、早く見つけるに限る。  もしかしたら殿下も今夜はそのつもりで、ミュゼット嬢ではなく私にしてくれたのかもしれないし。 「あの方はいかがでしょうか? ほら、窓際でグラスを持ってらっしゃる……」 「あれの爵位は一時的なものだ。親が複数爵位を持っているからと次男にも分け与えたが、入り婿になれば領地を本家に戻す予定と聞く。公爵家には嫡男がいるから、入り婿は無理だろう」  それは確かに、父である公爵が許可しない。 「では、あの方は?」 「──あれはラント侯爵家の長男だが……。女癖が悪いと評判だ。あんなのが好みなのか」 「黒髪の殿方が好きなのです」  日本を思い出すから。  なにげに応えたのに、ロデイル殿下が急に身を固くした。 (あ、そういえばロデイルも黒髪だっけ)  私が殿下に気があると、引いたのかな? 「ご安心ください。殿下は対象外です」 「そ、うか」  気遣って言い添えると、何やら喉につかえてるような返事をされた。 (疑ってるの? なら……)  次々に"どうだろう"と人物を挙げていくが、すげなく却下されていく。  だけど殿下からの推薦はなく。 (ちょっ、やる気あるの?)  さすがに抗議したくなった。 「殿下! 契約では、私の夫探しに協力してくれる約束でしょう?」 「──俺はいま、自分がとてもバカげたことをしていると思えてきている」 「なっ……」  "それは契約違反というものだわ!!"  問い詰めようとした時、物々しい様子の兵たちが宴席を割って押し入ってきた。  宴席の真っただ中に侵入してくるなんて、尋常じゃない。 (えっ、なに?)   「なんだ」 「どうした」  広間の貴族たちも兵を避けながら、口々に騒ぎを不審がる。  隊長格である兵は、殿下の前まで来ると慇懃な礼をとった。  城の警備兵だ。 「……これはなんの騒ぎだ?」  ロデイル殿下が、不機嫌に低い声を作って下問した。 「恐れ入ります、殿下。エリシア・ウェルテネス公爵令嬢をお引き渡し下さい。先ほど公爵並びにその家族を、王命のもとに捕らえました。()()()()()()()()()()()()()()()()()」 (私────?!)
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