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ステージ0103 聖儀の村
ー①ー
とある砂漠地帯にある村はオアシスの泉の近くに建てられている。
村の人々は数少ない湧き出る泉を枯渇しないようこの村の独自の教会がきっちりと村人に水を分ける。
しかし、罪を犯した者は一切水をわけないので実質の死刑宣告であるから、この村から出ざるえなくなる。
その罪の判別方法は"聖儀"と呼ばれる儀式。
この儀式を行うことで犯罪者を判別することができるからだ。
しかし、この数十年行われてる儀式も時が経つにつれ歪みが生じていくーー。
ー②ー
「お願いします!わたしらにお水を恵んで下さい」
母子らは必死に嘆願して教会員たちに願いを出る。
「ダメだ!おまえたちは犯罪者だからだ!その印におまえらの髪がそうだ」
と、教会員達が指し示す髪の色を指摘する。
「そ、そんな!?わたしらが一体何をしたんでしょうか!」
「しらばくれるのもたいがいにしろ!!おまえ達が髪の白いのはなぜなんだ?そりゃそうだろな?聖儀により判別した結果でそうなったんだ!あきらめろよな」
母親は思わず泣き喚いてしまった。
とんだ理不尽な行為である。
彼女達が髪が白くさせたのは、彼ら教会員の処遇である。
なぜか、彼女達の住む家に彼らが押しかけて無理矢理"聖儀"させられたからだ。
彼女の夫は教会員に逆らったため"聖儀"をさせられて断罪人として烙印されたのだ。
そして夫はそのまま村から出ざるえなくなった。
そして残った母親と子供達はとばっちりを受けた感じだ。
この母子だけでなくほかの村人も同じ仕打ちであり、教会に逆らう者は容赦なかった。
もちろん力づくで抵抗する者たちはいたが教会員達はそれに備えて金を惜しみなく出して強い武器や雇われた冒険者や教会戦士達が常駐してるため並の村人達では対抗は出来なかった。
彼ら教会の命令は絶対である。彼らがオアシスを独占してるかぎりは……。
ー③ー
灼熱の太陽の日差し。
こんがりと焼ける俺の肌。
この足場の悪い砂漠地帯を抜け出すために行商の護衛の元に歩く。
俺はロラン。
しがない冒険者だな。
ギルド階級はBランクで最上位はSランクだから、3番目の強さだからそこそこ強いな。
ほかの冒険者は3人いるが中でもとびっきり目立つのがこの黒髪長髪の男と黒いワンころ1匹。
名前はたしかシャン……ベトル?て言ったかな?
こいつは俺が話しかけても愛想がないやつだが俺に分かる。
そう、こいつは強い……。
いくつか死線を潜ってきた目だな。
おまけに魔剣使いよりも超える"魔剣者"である。
その身につけてる緑の細剣が魔剣らしいな。
俺もぜひ魔剣は手にしたいと思われるが……これには厳しい代償が必要である。
それは"人生"だ。
今まで来た過去の出来事をすっかり忘れ去られてしまうからな。
そのためこの魔剣を手にした者は少しずつ人生を吸い取られていく。
だからこの人生を吸い尽くした者の最期は廃人なるから、魔剣使いや魔剣者を好んでなりたがる奴はいないからな。
俺はゴメンだぜ。
いくら強くなりたいと思われてもそこまで望んではいないさ。
さて、長話が済んだところで……お客さんが待ち受けてますな。
そのシャンなんとかもすでに気がついてるみたいだな。
俺たちの周囲に取り囲むように奴ら。
"砂漠の掃除屋"はまた名をクソミミズ。
こいつらは大したことはないが集団でやってくれるとはめんどーだし、おまけに硬いだよな。
さて、一網打尽行きますか。
俺は失われた古代兵器の愛銃ランスガンを取り出し奴らに構えた。
ー④ー
さて、俺たちは道中魔物達からの脅威を守り無事についたわけだな。
「おい!運んでる積荷が足りないようだが?」
と、村の教会員の積荷受取役がいちゃもんつけたようだな。
「あー。それは道中、砂漠でずいぶんとやられたからすまんのぉ」
と、俺たちの雇い主がそう言った。
よく言うぜ。道中こっそりとほかの羽振りのいい村から余分に横流ししたからな。
俺たちもそこは黙って欲しいと金を握らせてるからあえて黙ってる。
俺たちも生きていくのに精一杯だからな。
雇い主はそこで押し通そうしたが教会員はニヤリと笑ってやがる。
なんなんだ?一体。
「おまえはここを初めてだろ?残念だったな。おい!例のアレを頼む」
と、積荷受取役の教会兵士がなにやら指示をしている。
と、教会の中から出てきたのは高貴そうな茶髪のじいさんが現れてきた。
一体何をする気だ?
「ま、まさか!?あ、あれは!!」
と、雇い主が肩を震えている。
おいおい、一体どうしちまったんだ?
「ようこそ。みなさん私はこの村の教会長アローズと申します。あなた方はこれより神託を心よりから受けなさい"聖儀"を」
と、そのじいさんは何やら聖典を取り出した。
そのまばゆい光が俺たちの全身に包まれた。
「!?」
そのじいさんが聖典を閉じるとまばゆい光はなくなった。
と、俺たちは身体の周囲を確認するがどこも異常が見当たらない……訂正しよう。異常があった。俺たちの頭がな。
「やはり犯罪者でしたか。この村ではあなた方のような野蛮な獣以下は歓迎されません。是非ともお引き取りください。……あと積荷は我々が接収していただきます」
俺たちは訳がわからなかった。
そして雇い主はそこで地べたに泣き喚いてるしさ。
ところで依頼金いただけるだろうかな?
……あ、無理ですか、そうですか。
はぁー。
ー⑤ー
「ねー、どうだった?」
俺とシャンは別行動してる仲間のもとに合流した。
俺は首を左右に黙って振る。
シャンのワンころに近づき優しく撫でる猫目少女アリス。
こいつも俺たち冒険者の仲間の1人だ。
雇い主はそのまま呆然としたまま外に出歩きクソミミズに喰われてしまったので仕方なく俺とシャンなんとかは宿先を泊めてくれる場所を探したが門前払いだし、野宿するにも食料や水を売ってくれない始末であった。
「はぁ、まいったな。このまま引き返すのに食料や水も残ってないし、かといって俺たちを受け入れてくれる行商人はいないしな」
三叉槍をかざした巨漢の青年グレイスは言った。
「まー。たしかにな。しかし俺たちはこの髪がある限りはこの村ではお尋ね者だしな。いっそ坊主頭するか?」
「いや」
「……いやだ」
ふー。やれやれアリスともかくシャンまで拒否されるとはな。
ま、顔が割れてるし、かといって丸坊主したら俺たちは犯罪者と宣言してるもんだからな。
「……だれだ?」
ふむ。ネズミが1匹、2匹、数匹ぞろぞろ仲間になりたそうに見てるな。
そのガリガリした白髪の少年たちはおそるおそるやってきた。
どうやら、親無しか。
「どうした?坊主。俺たちに何か用か?」
「おじさん冒険者でしょ?お願い!!あいつらをやっつけちゃって!!」
なんとも物騒な話が出てきたな。
「……その前に聞かせてくれないか?この村の惨状を」
ふむ。俺にはわかるぞシャン。
おまえの眼には凄まじい憎悪があふれているとな。
グレイスとアリスも暗黙でうなずいた。
仕方ないちょっと彼らの慈善活動になりますかな。
ー⑥ー
「て、敵襲ーーー!?」
俺たちは村人達が寝静まった晩、教会堂を襲撃の決行する。
コソコソやった方が効率がいいかって?
いやいや。俺たちが派手に暴れまわる理由は村人たちに見せつけるためさ。
「……騒がしいですね」
どうやら、親玉アローズさんのお出ましだな。
「……おまえの命を奪いにきた」
「ほぅ、ずいぶんと血気盛んなことですね。あなた方数人で何ができるのでしょうか?」
シャンの奴はやる気まんまんだな。
たしかにこのじいさんの言う通りだな……。
「む!そ、その剣はもしや!」
じいさんはびびってやがるな。
くくく。そりゃそうだろな。
相手は魔剣使いならぬ魔剣者だからな。
このじいさんがそこそこ強くてもかなわない相手だからな。
「くくく。ははははあはははは」
「おい。どうやら気が狂ったのか?」
同感だなグレイス、俺もそう思う。
「まさか、こんな所で手に入るとも思いませんでしたよ……まさか2本も手に入るとは」
「!?ふせろ!!グレイス、シャン」
俺の叫んだ同時に反応して伏せるシャン。
しかし、グレイスは手遅れだった。
まぁ、無理もない巨体だったからな。
やっぱり、俺の追跡者が狙いにきたか。
「あらぁ、残念ね。綺麗に斬れると思ったのに」
「はい、お姉様。頭がきれる方とはおもいませんでした」
そいつらの繋がれてるワイヤー線から血が流れ落ちるのが分かる。
そいつは丁度綺麗に両面真っ二つの身体に分けられていた。
ーー俺たちの仲間"アリス"。
アリスはどうやら2人で演じていたらしい。
そのワイヤー線に切断されたグレイスの上半身は見事崩れ落ちて肉塊になった。
「……おまえ達、魔導人形か?」
そのアリスの片割れが笑った。
「ちょいと兄さん。それはないじゃない?あたしたちは名前があるんだよ?」
「はい、お姉様。私たちにも名前があります。ご紹介します。私はフィーネです。お姉様はファーネと申します。以後、お見知り置きを」
フィーネは深々とお辞儀をしてるな。
おい。シャンおまえまでお辞儀しなくていいぞ?
「……気づかなかったな。俺も修行不足だな」
「ふー。Aランクのあんたが言うと俺の立場がないな。……あのワイヤー線やっかいだな」
フィーネとファーネの丁度半身同士繋がれているあのワイヤー。
近づこうとすればあいつみたくぷっつり切れるわけだな。
「さて、おまえたち、あの者たちの武器を取り上げなさい。……あとで可愛いがってあげますからね」
「はい!アローズ様!」
双子はナイフを取り出し臨戦態勢を取る。
けっ!人形性愛者かよ。
とりあえず俺たちも武器を構える。
「……ロラン」
「なんだ?」
「俺はあのワイヤーを斬るから、お前は足止めして欲しい。……動き回ると厄介だからな」
「同意するわ!俺もおまえと同じ考えたよ!」
俺は先手必勝でランスガンを数発撃つ……案の定双子姉妹は軽くよけたがな。
さて、この戦勝てるかな?
ー⑦ー
「くっ!?ちょこまかと!お、あぶな!?」
双子姉妹は連携取れた攻撃で攻めてくれる。
あのワイヤーを気をつけるのはもちろんこと双子が持ってるナイフも気をつけないといけない。スキを見せたら余裕でナイフを投げてくる。
どうやらナイフは#魔法武器__マジックウェポン__#であり投げたナイフも手元に戻る仕組みか。
クソ!!埒があかねなー。
あのシャンもあの双子同時に相手しないといけない。
そしてあのアローズはのんびりと戦い見物してやがる。
もちろん嫌がらせでアローズに撃ち込んだがあの双子姉妹は軽く弾くからな。
もちろんこっちに狙われそうになったからもう二度とやらん!
……で、ワンころはそこで大人しくお座りしてるな。
はぁー。
「……どうした?」
「いや、優雅に見物するおまえの犬が羨ましいと思ってさ」
「……なら、あいつも戦いに加えよう」
と、シャンはワンころをなにか合図した。
突然ワンころの姿が変化した。
「まさか!スライムか?」
そのスライムは形態を変えてもう1人のシャンを変えた。
これで3人と相手2人か。
双子人形姉妹もまだまだ余裕があるな。
まいったな、俺のランスガンの魔力が切れかかってるところだな。
しかし、あのワイヤーやっかいだな。
なんか、こう一気にまとめてやれないだろうか?
まてよ?あのワンころを……。
「おい!シャンちょっと耳を貸せ」
「……断る」
「なんでだよ!?」
「……痛いから」
「いや!?俺は別に耳を切り落とすとか、そんな意味じゃねーぞ?ようは少し相談だよ!?相談!」
こいつ天然か?やれやれ。
ただ、相談に耳を傾けてくれたが案の定拒否られたな。
でも、やってみる価値はあると言ったらなんとかしぶしぶ承諾してくれたよ。
気持ちわかるよ。俺も昔魔物飼ってたからな。
シャンは合図のもと、ワンころに水に形態を変化する。案の定双子姉妹にもぶちまけられるから、あられもない姿になる。
そんな眼で見るなよな。
と、忘れずに俺の出番だな。
魔力一気に装填する。
精神を統一してイメージする。
そう、ビリビリするイメージだな。
そして姉妹に向かって愛銃を放つ。
「 放電槍」
俺が放った電流ランスガンは双子姉妹に放電して身動き取れなくなる。
そしてすかさず真打ちであるシャンが双子姉妹のワイヤーを切断すると双子姉妹はプツリと意識が切れた。
どうやらあのワイヤーが双子姉妹の動力みたいだったな。
……ふむ。使えるな。
さて、最後の仕事をしてゆっくり飯食べて寝たいな。
ー⑧ー
ファーネとフィーネの双子姉妹である魔導人形を失ったアローズはいくつか教会員を率いて水や食料や宝の品かき集めて村から脱出しようとするが村人達に囲まれて捕まった。
そして先程のシャンペルト達に相談した少年たちが村の大人達に教える。
アローズ達の髪をむしりとる。
カツラだった。
そう彼らも犯罪者だったからだ。
そして彼らはその場で磔されて生きながら燃やされて処刑された。
そして村人達はこの聖典を悪用しないように破壊した。
こうして絶対的に支配された教会はなくなった。
村人は安心して水を分配できるのだと。
しかし、その村の現在はーー。
ー1年後ー
「……シャンペルトさん聞いてますかー?」
「……聞いた。シャンペルトが聞いたという話」
スコーンと音が鳴り響き、ゴブリンの棍棒を頭に見事綺麗に入るシャンペルト。
「痛い」
「そりゃあ。そうですよ。この棍棒はかなり鍛えてあげてますからね」
ギルド受付嬢がすごい形相で睨みつけるのはこのシャンペルト相手くらいだろう。
「ははは。相変わらずだな。おまえら」
「あ、人形性愛者さん」
「……誰だ?」
「おい!?俺は断じて児童性愛者でもないし人形性愛者でもない!!そしてシャン!おまえ先日会ったばかりだろ?」
「ロリコンなんだ」
「いや!?そこは言い間違いだ」
ひそひそと受付嬢達が話し合いする。
実際ロランには魔導人形がそろえている。
そう、かつてシャンペルトとロランが戦っていたフィーネとファーネの2人がいるからだ。
ロランはあの戦いから魔導人形を持ち帰りある場所で彼女達を改造して自分の相棒として蘇らせたのである。
「ご主人様。そろそろ依頼報告完了しましょう。今でも児童性愛者の変わりはありませんから」
「おい!主人のことを軽んじるな!それにおまえは遠慮なく毒舌だな。おい!」
また、ロランとフィーネのやりとりもこのギルドの名物になっていた。
「……シャンペルトあの村知ってるか?」
「……」
「おまえさんも知ってそうだな」
シャンペルトは黙っていた。
かすかに記憶があった。
たしかにあの村は教会の支配がなくなった。
しかし、支配という"聖儀"という物がなくなったため村は数ヶ月で滅んだ。
そう、犯罪が多発したからだ。
そして次第に力という支配というものが横行してやりたい放題した結果、オアシスの水が枯れてしまった。
いくつかの村人はこの村を捨てて新たにオアシスを求めたが砂漠の掃除屋に一掃された。
シャンペルトは思った。
自分の正義とはなんだろうか?
もしかしたらその正義の行いの結果が別の意図しない物が生まれてくるのだろうかと。
そんなシャンペルトに察したのか、ロランは肩を叩く。
「おまえは正しかったよ。俺たちはその道を切り開いて歩いただけだ。せっかく道を切り開いたのにやつらが勝手に道を外して他所に行っただけのことさ」
そのロランの問いにシャンペルトは何かにささる。
シャンペルトは死ぬ間際までロランの言葉の真意を何度も忘れないよう記憶の片隅に刻んでいた。
聖儀の村 003 Stage clear!
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