12月21日

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 瑞希が茶碗を片付けて洗面所に行くと、すでに洗濯物が部屋干しされていて、すぐに外に出せる状態になっていた。瑞希のワンピースも、丁寧にしわを伸ばされている。どろどろだったフェラガモの靴まで、きれいに洗って置いてあった。感心しきってうなずきながら、瑞希は洗濯物をベランダに出した。  朝の空気はきりっと冷たかったが、冬晴れの、気持ちの良い日和である。 ――そういえば、今何時なんだろう?  瑞希はプラケースの上に置いてあった小さな時計に目を向けて、びっくりしたように動きを止めた。 「8:47」  こんなに早起きしたことは、瑞希はついぞなかった。いや、待てよ。洗濯もやって、朝食も作ってだから……いったいこいつは、何時に起きてたんだ?  あきれつつ、居間で横になっている紺野に目を移す。  さすがに熱が高いので、すぐに眠ってしまったらしい。くうくうと小さな寝息を立てて、目を閉じている。閉じた目元に際だつ長いまつ毛に思わず目を奪われた瑞希だったが、すぐに立ちあがると手近にあった小さめのタオルを水で絞り、そっとその額に載せてやった。 ☆☆☆  紺野が目を覚ましたのは、十時過ぎだった。  ぼんやりと部屋を見回していた紺野は、隅の方に瑞希が手持ちぶさたそうに座っているのに気づくと、その視線を止めた。 「目、覚めた?」  瑞希は紺野に気がつくと、疲れたような笑みを浮かべた。四つんばいで紺野の側まで来ると、その額に手を当てる。 「あー、まだ、高いね」  瑞希は落胆したようにそう言うと、時計を見上げた。 「ねえ、今から医者にでも行ってくれば? その間、あたしが家にいると心配なら、あたしは適当に出かけてるからさ」  すると紺野は小さく首を振った。 「大丈夫です。多分、一日寝ていれば下がると思うので」 「……そう?」 「ありがとうございます、瑞希さん」  名前で呼ばれて、瑞希はなぜだかドキッとした。  紺野はそう言ったきり、こころもち荒い息遣いをしながら、静かに目を閉じている。  瑞希はそんな紺野をじっと見つめていたが、ややあって、ぽつりと口を開いた。
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