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瑞希は結局、朝のみそ汁を少し増やし、そこに豚肉を入れてうどんを作った。昨夜のように自分はどんぶりで、紺野はお椀に少しだけ入れて、台所にはみ出すようにしてちゃぶ台を用意した。
「適当でごめんね。夜はおかゆを作ってあげるから」
瑞希の言葉に、紺野は大きく頭を振って笑顔をみせた。
「とんでもない、ありがとうございます。人の用意してくれたものは何でもおいしい」
そう言って嬉しそうにうどんを口に運ぶ紺野を、瑞希はびっくりしたように見つめた。
「どうかしましたか?」
「……そんなこと、言ってもらえたの、初めて」
瑞希はどんぶりと箸を置くと、うつむいて目のあたりをしきりにこすった。
「父さんもあいつも、あたしが何か作っても当たり前みたいな顔しかしないで、おいしいなんてほとんど言ってくれたことがなかった。ちょっと気に入らなければ作った物をひっくり返して、作り直せだの、出て行けだの……」
そう言って顔を上げると、泣き笑いのような顔をして見せた。
「あんたって、マジで変わってんね」
紺野は、そんな瑞希を何とも言えない表情で見つめていたが、それ以上何も聞こうとはしなかった。黙って最初に瑞希がよそってくれたうどんだけはきれいに食べて、食器も洗って片付けてから横になった。
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