12月21日

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 片付けが終わるや否や、無言で昨日の毛布を台所に引っ張っていく紺野を見て、瑞希は慌てた。 「え、ちょっと待って。あんた、また台所で寝る気?」  紺野は何も答えなかった。黙ってハンガーラックから昨日のダウンジャケットを取ると、それを着始める。 「何考えてんの? やっと熱が下がったってのに、台所なんかで寝たら、またぶりかえしちゃうよ⁉」  だが、紺野は黙って台所の隅に行くと、毛布を被って丸くなってしまった。  瑞希はどうしていいかわからず、ぼうぜんとその場に立ち尽くした。  しょっちゅういきり立って怒声を張り上げていた父親や前彼とは明らかに違う態度だが、恐らくこれが彼なりの怒りの表現なのだろう。父親や前彼の怒りは、内心腹を立てながらでも、ただ耳を塞いでその場をやり過ごせばそれでよかった。だが、これを放置してやり過ごしてしまったら、紺野は再び体調を崩してしまうだろう。そんなことになったら、自分が許せなくなるような気が、瑞希はした。   「……悪かったよ」  やっとのことで絞り出した声は、震えてかすれていた。 「もう二度と、あんなことはしない。約束する。……だからさ、お願いだから、そんなところで寝ないでよ」  喉元のこわばりを必死で飲みくだしながら言葉を絞り出すのだが、どうしても上ずって震えた声になってしまう。  その声に、紺野は体を起こしはしたが、まだ半信半疑なのだろう。顔を壁の方に向けたまま、低い声で念を押す。 「絶対に、約束ですよ」  今口を開いたらあふれ出してしまうのは必至だった。だが、返事をしないわけにはいかない。瑞希は決死の思いで言葉を絞り出した。 「……約束する」  それが限界だった。言葉を絞り出した途端、決壊した堤防さながらに両眼から涙があふれ出た。
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