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今度は紺野の方が目を丸くする番だった。
「……え? ちょっと、瑞希さん……大丈夫ですか?」
慌てて立ちあがり、瑞希のそばに駆け寄る。
「なんか、怖がらせちゃったんでしょうか。すみません、おかしな態度をとってしまって……」
それでも瑞希は肩を震わせて泣き続けている。紺野はおろおろした様子で必死にとりなそうとした。
「僕、あんなことは絶対にしてほしくなかったので、……いやな態度をとってしまったことは謝ります。本当にすみませんでした。だから、あの、お願いですから、そんなに、泣かないでください……」
それでも下を向いて肩を震わせ続けている瑞希の様子に、紺野が途方に暮れたような表情をうかべた、その時だった。
「ぶっ……」
うつむいていた瑞希が、突然ふき出した。
紺野は目を丸くして瑞希を見やる。
「あっははは……!」
泣いていたはずの瑞希が突然腹を抱えて笑い出したので、紺野はあっけにとられたように口を開けて瑞希を見つめた。
「あはは……ああ、おっかしい。あんた、マジでヤバイって」
大笑いしている瑞希を見て、紺野はほっとしたような、困ったような表情で笑った。
瑞希は、泣いた涙か、笑った涙かよくわからない涙を拭くと、紺野に向き直り、小さく頭を下げた。
「さっきは、ごめんね」
紺野はホッとしたような顔で頭を振ると、自分も頭を下げた。
「僕の方こそ、すみませんでした」
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