12月21日

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 しかし困ったことに、この家には布団は一組しかなかった。夏がけやタオル類を引っ張り出しても、とても二人分の寝具は用意できそうになかった。 「困ったね」  瑞希がため息をつくと、紺野は事も無げに笑った。 「大丈夫ですよ、僕はまた台所で寝ますから」  そんな紺野を、瑞希は横目でジトッとにらむ。 「あんたさー、それで熱出したくせになに言ってんの? またぶりかえすって」 「居間と台所の境の戸を開けてもらえれば、暖房も届きますから」 「それにしたって……」  瑞希はため息をつくと、しばらくの間何か考えているように黙っていたが、ふいに紺野に向き直ると、じっとその顔を見つめた。 「あんた、あたしに絶対手を出さない自信、あるんだよね?」 「……え?」  紺野は一瞬ためらってから、おずおずとうなずいてみせる。それを見た瑞希は、何のこだわりもなくさらっとこう言ってのけた。 「じゃあ、いっしょに寝よ」  紺野は目を丸くして凍り付いた。 「あんたにそれだけ固い意志があるんなら大丈夫。布団は一組しかないんだし、あたしも別にあんたのことを襲ったりしないしさ。それしかないよ。そうしよ」  あまりに屈託なくそう言われて、返す言葉が見つけられずにいた紺野だったが、ややあって、目線を足元に落としたまま、何とも言いにくそうに口を開いた。
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