12月22日

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「じゃあ、電話代。それと、食事代。念のため、明日の分くらいまで持ってた方がいいですね」  紺野は財布をのぞいたが、二千円しか入っていないことに気付くと、慌てて引き出しに入っていた封筒から一万円札を二枚取り出して、瑞希に渡そうとした。瑞希は慌てて手を後ろに引っ込めると、苦笑した。 「この辺の公衆電話って、そんなにかかるわけ?」  すると紺野も、ちょっと笑ってうなずいた。 「ええ。田舎なんで、この辺の公衆電話はこのくらいないとかけられないんです」 「ぼったくりすぎでしょ」 「先に、何かちょっと買い物をすればくずれますから、それでかけてください。あ、でも何だったら、十円玉も渡しましょうか?」 「大丈夫だって。十円なら持ってる」  瑞希はふと時計に目をやると、その目を大きく見開いた。七時五十分を過ぎている。 「紺野くん、仕事行かなきゃ!」  その言葉に紺野も慌てて時計を見ると、息をのむ。 「……ほんとだ。ありがとうございます」 「あたしも一緒に出るから、着替えるね!」  瑞希は昨日洗って乾かした自分の服をつかむと、洗面所に走った。  紺野はちゃぶ台の上を急いで片付けると、居間で着替え始める。ジーンズにグレーのパーカーを着て、ダウンジャケットを引っかけると、何を思ったのか、その辺にあった紙切れに急いで何か書きつけた。さっきの一万円と一緒に小さく折りたたむと、それを居間にかかっていた瑞希のコートのポケットに放り込む。  超速で身支度を調えた瑞希が出てくると、入れ替わりで紺野が洗面所に飛び込んで身支度を調える。その間に、瑞希は流しの食器を洗えるところまで洗った。  洗面所を出た紺野はそれを見て、恐縮したようだった。 「あ、いいですよ。そんなこと、僕が帰ってきてからやりますから」 「できるところまでだから。もうやめる」  瑞希は半分くらいまで洗ったところで水をとめると、手を拭いてコートを引っかけた。  時計を見ると八時十分。二人は急いでアパートを出た。 「すみません瑞希さん。九時までは、駅前の珈琲屋でコーヒーでも飲んでいてください。そこまで、送りますから」 「別にいいよ、駅のベンチで座ってるから。仕事場は、駅を通るの?」 「ええ。駅を越えて二十分くらい行った所なんです。でも、走れば十分ですから」
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