12月22日

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 瑞希は紺野に言われたとおり、九時まで駅前のコーヒー店で時間をつぶした。  久しぶりに飲むコーヒーは何とも美味しかった。瑞希は白く温かい湯気を立てて揺れる黒い表面を見つめながら、小さくため息をついた。  湯気の向こうに、紺野の笑顔が浮かんでくる。  瑞希はポケットに入っていた紺野の携帯番号を取り出すと、じっと眺めた。  これで、わずかでも紺野とつながっていられると思うと、本当に嬉しかった。これがあれば、少しの間一人でも頑張れそうな気がする。  瑞希は大事そうにメモをしまうと、そっと自分の唇にその細い指を当てた。  あの時。自分は紺野に無理やりキスをした。その感触を思い出すと、今でも胸がどきどきする。何とも、幸せな感覚だった。それ以上の行為を星の数ほどこなしてきた彼女だったが、たかがキスくらいで、こんなにどきどきしたことは今までなかった。 ――もう一度、会いたい。  瑞希は目を閉じて、大きく息を吸い込んだ。  今度会う時は、もう少しまともになっていよう。そうして、ちゃんと告白したい。OKをもらえるかどうかは、分からないけど。  瑞希は息を吐き出して、目を開いた。  そのためには、とにかく現状を何とかしなければ。珈琲屋の時計は、あと十分で九時をさす。そうしたら、何もかも話そう。そうして、どうしたらいいか教えてもらおう。場合によっては、警察に連れて行かれるかもしれない。自分のせいで、あいつがつかまるかも知れない。  それでも、仕方がないと思った。 ――あいつだって、あんな世界から足を洗わない限り、まともな生活はできない。どんなに恨まれても、それが多分、一番いい方法なんだ。  時計の針は、あと三分で九時になる。瑞希は席を立つと、会計をしにレジへ向かった。
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