12月25日

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「これは?」 「今日、クリスマスだったので。昨日急いで買ったから、あまり選んでいる暇がなかった。気に入ってもらえるかどうか、微妙なんですが……」  紺野はまだいくぶん息を切らしながらこう言って、恥ずかしそうに笑った。瑞希はそんな紺野を何とも言えない表情で見つめていたが、やがて震える声を絞り出した。 「ありがとう」  視界がぼやけてよく見えないので、瑞希は手でごしごし目元をこすった。 「開けてみても、いい?」 「もちろんです」  瑞希はていねいにリボンをほどくと、包みを開けた。かわいらしい箱の中には、シンプルだが女性らしいデザインの時計が入っている。瑞希はそれをしばらくの間、言葉もなく見つめていた。  紺野はそんな瑞希の反応を見ながら、恥ずかしそうに笑った。 「ほら、瑞希さん、携帯を持ってないって言ってたので、不便だろうと思って。どんなのがいいか分からなかったので、お店の方に瑞希さんの雰囲気をお伝えしたんです。そうしたら、これを選んでくれて。気に入っていただけたら、いいんですけど」  瑞希は時計を取り出すと、そっと自分の左腕にはめ、うっとりと眺めやった。 「……ありがとう」  瑞希はそう言うと、紺野をうるんだ目で見つめた。 「すっごく……ステキ。あたし、一生大切にする」 「一生だなんて。そんなに大したものじゃないんですよ。でも良かった、喜んでもらえて」  恥ずかしそうに笑う紺野を、瑞希はしばらくの間じっと見つめていたが、おもむろにプレゼントの包みを脇に置いて立ちあがると、紺野に歩み寄った。  紺野はまだいくぶん息を切らしつつ、瑞希にちょっと首をかしげて笑いかける。瑞希はそんな紺野の腰に、無言で自分の腕を巻き付けた。  紺野は突然のことに驚いたのか、目を丸くして何か言いかけた。だが、そんな反応には一切構わず、瑞希は両腕に力を込めると、紺野の体に自分の体を密着させ、その胸に顔をうずめた。  自由通路の真ん中で、抱き合う二人。  紺野はかなり動揺したようだった。しばらくは何も言えずに目を白黒させていたが、ややあって顔を赤らめながら、遠慮がちに声をかけた。 「あ、あの、瑞希さん……」
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