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 民代が去ってから、奈緒はすぐに真紗也と会った。  健斗と民代にすべてを知られていて、興信所の証拠写真があることも話した。  このまま関係を続ければ二人とも駄目になるし、真紗也の将来を無茶苦茶にするつもりもないと伝えると、真紗也は不承不承ながら、首を縦にふった。  将来はグローバルに活躍したい。真紗也の夢であり目標だ。きっと真紗也は冷静に、情欲に溺れることと将来の夢を、天秤(はかり)にかけたのだろう。そして、夢を選んだ。  奈緒は、真紗也が納得してくれたことに安堵した一方で、夢がある真紗也と何もない自分を比べて、言いようがない(むな)しさをおぼえた。  真紗也との関係に終止符を打って以降、心の底が抜けたような喪失感に(さいな)まれていたが、これでいいと、自分に言い聞かせた。  また、心の穴を韓流ドラマで誤魔化す日々に戻った。  ところが、真紗也と別れてひと月ほどたったある日、ふいに訪ねてきた男の言葉に、奈緒はぎょっとした。
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