レイジ 絶体絶命

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レイジ 絶体絶命

駅前の大通りから少し離れ裏通りを歩く。たった一本奥へ入っただけで駅前の雑踏とは違い、歩いている人もまばらだ。 「歩いて十分(じゅっぷん)ほどです」 そういうエルの表情は少し緊張しているようにも見え、いつも以上に口数が少ない。エルが俺に接触してきた目的。きっと、この先にその答えが待っている。俺は確信めいたものを感じた。 金銭目的ではない。だって、今までその気になれば無防備な俺のことをどれだけでも騙すことができただろう。かと言って、エルは宗教のように何かに(すが)っている様子は一切ない。 どんな答えでもいいが、俺はたった一つだけ願う。明日からも笑っているエルに会いたい。それ以上は何も望まない。 「俺は、エルさんと並んで歩きたい」 「え? 今歩いていますよ?」 「ううん、そうじゃない。自分をもっともっと高めて、自信を持ってエルさんの横にいたい」 「やっぱり均さんは素敵ですね。きっと大丈夫です」 自分に言い聞かせるようなエルの言い方に少し違和感を覚えたが、足を止め俺のほうを向いて微笑んだ顔に、そんな感覚も一掃されてしまう。 (やっぱり、いいな~) 俺の本意が伝わったわけでもなく、交際の返事をもらえたわけでもないのに、身体が火照ってくる。うん、夏の日差しのせいにしよう。 ふと前のほうを見ると道端に三人の若者。髪の毛を派手に染め、地面に座り込んで大きな声で騒いでいる。俺たちが近づいて行くのに気づきチラチラと見てくるが、その中の一人がエルを見てニヤリと笑った。 (うわぁ~ 絶対なにか言ってくるじゃん、邪魔すんじゃないぞ) そう思い、俺が少し前に出てできるだけ自然にエルを車道側に誘導した。 「痛ぇっ!!」 「あっ、すみません」 若者たちに気を取られ過ぎて、前から来る人にぶつかってしまった。慌てて謝罪したが、目の前にいたのは更にヤバそうな二人組。 髪の毛を全て剃り上げ、上半身はほぼ裸だろうという服にびっしりのタトゥー。ギネスに認定されたいのかと思えるほど身体中に付けたピアスの数々。絶対にイっちゃってると思われるトロンとした目。 その淀んだ目が俺の隣にいるエルのことを捉え、そいつは下品に笑った。
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