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レイジ 君のためなら死ねる
「どうもすみませんでした」
改めて頭を下げ、そのまま通り過ぎようとするが、それは許されないようだ。
「お前ぇからぶつかってきて、喧嘩売ってんのかい?」
「いえ、そんなことはありません」
「ってか、すっげぇ痛かったし慰謝料払いな。慰謝料はその姉ちゃんでいいや」
二人が、エルの頭のてっぺんから爪の先まで舐めるように視線を這わせる。
(くそっ、ふざけんじゃない)
そのいやらしい視線を遮るように、俺は一歩エルの前に出た。
「さすがにそれはダメですよ」
「へへへ、じゃ、お前を殺めてからたっぷり可愛がってやるよ」
そう言いながら光り物を出してきたが、そんなものを出されたら余計に引き下がるわけにはいかない。ちらりと横目でエルを見たが、怯えた顔をして足も竦んでしまっているようだ。
本気で刺す気だったのか、脅すだけのつもりだったのかわからない。だが、そいつが笑いながら近づいてきたと思った直後、俺の腹部には深々とナイフが刺さっていた。
「やっべー 本気でヤルなよ」
「うっせぇ、滑っちまったんだよ」
「とにかく逃げるぞ」
腹部に強烈な痛みを感じ、立っていられなくなり俺は地面に倒れこんだ。
「均さん、均さん、しっかりして!!!」
耳元で必死に俺の名前を呼んでいるエルの涙声。俺の手を握ってくる柔らかくて暖かい手。
(エルと初めて手を握ったよ。でも、これが最初で最後)
『君のためなら死ねる』
そんな臭い台詞、漫画の中だけかと思ったが、現実でもあるんだね。でも良かった。あんな輩にエルが汚されなくて。
俺はエルに会うまで二十五年待った。だって、エルを守るために生まれてきたんだから。
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