レイジ 不安になる

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レイジ 不安になる

改めて時計を見ると、彼女に話しかけられてから1時間近くが経っていた。あっという間だった。結局、彼女は俺に何も求めなかった。そのうちに怖いお兄さんがやってくる? 美人局的な? いや、それはあり得ない。彼女(エル)はそんな()じゃない。 (ははは、俺、心の中で彼女のことを『エル』って呼んでるし) 入社したての頃、先輩にキャバクラへ連れていってもらったことがある。 髪の毛を染め、キャバイ化粧をした中の上くらいの女性が俺たちに付いた。大きな声で下品に笑い、飲みたくもない酒を勧めてくる。1時間くらいしかいないのに、ン万円も取られたと先輩は笑っていたが、正直、俺は楽しくなかった。 そんな店とエルを比べるのは、あまりにも馬鹿げた事だとわかっているが、俺を幸せな気持ちにさせてくれる美少女が、1時間も一緒に過ごしてくれた。後から請求書が届いても、これまた金額も見ずに素直に払ってしまいそうな。 とは言え、なんとなく不安な気持ちもあったので、コーヒーをお代わりしてから1時間ほど店で時間を潰していたが、誰かが来るような面倒毎も起きず、俺も店を出た。 部屋に帰るまで、怖いお兄さんがいないかキョロキョロしたり、時には後ろを振り返ってみたりしたが、やはり『お兄さん登場』はなかった。 傍から見たら、そんなことをしている俺のほうがよっぼど怖いけどね... 別の意味で。
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