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レイジ 悶々とする
部屋に戻ったが、彼女のことが気になって仕方ない。パソコンを起動してネットで調べてみた。
『カミシタ エル』ってどういう字を書くんだろう。いったい何者? あんな美少女が、本当に俺以外の人にも声をかけていれば噂になっていてもおかしくない。俺に話しかけてきた動機もちょい変だったしね。
いろんなキーワードで検索するが、いずれもあのエルにはヒットしない。
(えぇ~い、これ以上は無理無理。もうお終い!)
パソコンと一緒に俺の気持ちもシャットダウンした。
翌日からまた新しい一週間が始まった。
『大きな手柄もないが、致命的なミスもしない』
これが俺への評価かな。粛々と業務をこなす日々。だって俺は偏差値50男なのだから。今までずっとそう思っていたのだが、ふとエルとの会話を思い出す。
仕事ができると言われている同僚。その人たちの中に入っても、俺は平均点を取れるのだろうか。
例えば、あの有名な東大。東大の中で偏差値が50だとしても、その人は一般的には偏差値70前後っていうことになるよね。
今まで俺は、与えられた場にしか身を置かなかった。高校や大学を選ぶときにも、自分の偏差値を基準に選んできた。そして今の会社へも。俺は偏差値50であり続けたと言うより、俺は偏差値50になるような生き方をし続けてきたんじゃないのか。
いろんなことを自問自答しながら、『誰かに話を聞いてもらいたい』
そんな気持ちが芽生えてきた。
(エルにもう一度会いたい。会って話をしてみたい)
最初はエルの容姿にずっぽりハマった。しかし、1時間ほど話して、こうして今振り返ってみると、彼女の魅力はそれだけじゃない気がしてきている。
『堕ちる』
今ならわかる。俺、エルに堕ちたんだと。
だが、それも人生。悪くない...
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