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レイジ 幸せの絶頂
先週と同じように向かい合わせで座り、とりあえず俺もコーヒーを注文する。
(眩しい! 後光が射してるよ!!)
彼女の顔を直視できない。そんな俺の気持ちも知らずに、エルは微笑む。
(貴女に会いたくて、また会えるかもしれないと思って)
思い切ってそう伝えようと思ったが、それより先にエルが口を開いた。
「先日、とても楽しかったので、またお会いできないかなと思って..この店に来てしまいました。お会いできて嬉しいです」
(うっそ~~~っ)
お世辞でも社交辞令でもいい。奇跡的にエルに会えたのは嬉しいが、それをはるかに超えてきたエルの言葉。これで俺のテンションはマックスに登り詰めた。それからの俺は、自分でもおかしいくらい饒舌だった。
先日会って、エルからの言葉を受けて自分のことを考え直したこと。
俺はずっと偏差値50だと思っていたが、知らず知らずのうちに、そういう場に身を置いてしまっていたんじゃないか。
もっと上のレベルの中に入って、その中でも偏差値50を取るという生き方もあるんじゃないか。
俺が話している間、エルは俺の目を見ながら優しく微笑み、時には深く頷く。話を遮るようなこともしない。俺は自分の思いを熱く語ってしまった。
そんな時でも、ふと冷静になる瞬間ってあるよね。
「エルさん、ごめんね。俺ばかり話して」
「いいえ、均さんのお話は楽しいですよ」
「先日、人と話すのが苦手って言ってましたよね。でもそんなことはない。エルさんは聞き上手なんだと思う」
「それは、均さんが話し上手だからですよ」
結局また1時間ほど話した。でも、俺の感覚では一瞬だよ、一瞬。
「今日も楽しい時間をありがとうございました」
エルが座ったまま軽く頭を下げる。
あぁ、お別れなんだな。頭の中では『蛍の光』が鳴っている。
(次、次は、次も...)
俺の気持ちは、また会いたいの一点張り。でもどう言って伝えたらいいのだろう。逡巡していると、エルが席も立たず何か言い淀んでいる。
(あっ、そうか。そうだよね)
エルの表情を見て俺はハッとした。なんて言ったらいいかな、夢の国から現実に戻された感じ。エルから優しい言葉をかけられて、俺は勘違いしていたんだ。一人で舞い上がってバカみたいだ。エルが俺に接触してきたのはなにか目的があるからなんだと。
(金か、勧誘か? なんだ、なんだ?)
俺は、エルの本心を探ることに蓋をしてきたが、いよいよ『何か』を言われる覚悟をしなければいけない。でもね、エルには人を騙したり貶めたりするような汚れ役にはなって欲しくない。お金が必要なら、いくら必要だってストレートに言ってくれ。
俺は頭の中で、自分の貯蓄額を思い出していた。
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