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元帥はカンカンだ。
早速、呼び出された開発責任者の宝海は恐縮するしかない。
「あれじゃ敵を支援しているのも同じだぞ! なにやってるんだっ!」
「で、でも、不可解です? 記憶を消されて、どうしてあれほど強くなったんでしょう?」
「バカモノ! そんなこともわからんのか! サスタナブルは敵の戦闘への恐怖心も消したんだ!」
「すると、どうなるんでしょうか?」
「訓練された記憶だけが残ってるんだから、あいつら馬鹿の一つ覚えに突撃を繰り返してくる。こっちの兵士は怖がってしまって、まるで相手にならん! どうしてくれる!」
「どうしてくれると言われましても……。これは想定外でして、まったく対処法を考えていませんでした! 申し訳ありません! かくなるうえはアレを我が軍で撃ち落してしまいましょう」
すると元帥は首を横に振った。
「いや、いや、いや、せっかく開発したものを活用しないなんて、愚策もいいところだ!」
「ではどうすれば?」
「こっちの兵士もサスタナブルに攻撃させろ、あいつらから恐怖心を奪ってしまうんだ! そうすれば対等に戦える」
「ええっ! しかし、それでは命令系統がすっかりダメになってしまいます!」
「だから、こっちは記憶をなくすのは下級兵士どもだけでいい! あいつらの脳みそをいじくれ!」
「しかし戦争が終結して、兵役を解かれたあと日常生活ができなくなってしまいます、戦後復興の妨げになるのでは?」
「かまわん、あいつら会社や家業に戻るだけだ! 今度は戦う歯車から納税する歯車になるんじゃないかっ! いくらブラックに働かせても、一月後には、また頭の中が兵士に戻るんだから、なんも気にしないで、ニコニコして働くさ」
「ええっ! それじゃあんまり非人道的では?」
「いいからやれ! 人権なんか考えていたら戦争はできるん! 戦争は勝たなければならん! 負ければ我が国の明日はない!」
「わ、わかりました!」
宝海は言われるがまま、サスタナブルに命令を出した。
はじめのうちは連戦連勝して戦況は改善したものの、今度は戦争が泥沼になっていった。なんせ敵側は負けていることを理解できず、どんどん戦場に兵士を送り込んで来るし、こっちはこっちで休戦したくても、兵士たちが勝手に戦ってしまう。
これでは収拾がつかず、A国の資源も経済力もどんどん枯渇していった。
今度は元帥が大統領から叱られる番だ。
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