宝海氏に懺悔の資格はあるか?

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 「なにやってんだ! このままズルズル続いてみろ! 今戦ってる国だけじゃなく、疲弊した我が国をB国やC国が狙ってくるぞ! これじゃ国が滅びしてまう!」  「しかし、一度、始めた戦争は終わらないモノなのです。相手の国も必死で抵抗するわけでして……」  「ええい! なら先手必勝だ! B国やC国をサスタナブルで攻撃しろ! そうすれば相手は作戦もなく、ただ兵を突撃させるだけなんだから、こっちが必ず勝つ!」  こうして戦争は際限なく続き、とうとう世界戦争の引き金を引いてしまった。  地球は荒廃して、とてもじゃないが住めたものではない。  そこで心ある科学者たちは新天地を求めて、巨大輸送船、エビデンス号evidenceを建造して、彼らのリーダーを見限り、移住希望者と共に一万光年先にある、惑星ディスカスdiscussを目指した。  惑星ディスカスは地球によく似た緑豊かな星だ。  これを操縦室のモニターで見た人々は手をとりあって喜んだ。  ただ一人を除いて……。  サスタナブルの開発者、宝海だ。彼もまた地球を見限って、この宇宙船にクルーとして乗り込んでいる。もちろん身分を偽って名もないエンジニアとして働いているのだった。  彼は嘆いた、「ああ、わたしが開発した兵器のおかげで、とんでもないことになった……。もしこの事実が知られたら、家族ともどもリンチに遭ってしまう。いや、殺意を持った人々が廃人になってしまうんだ」  彼は後方を映しているモニターの画面を眺めていた。  思えば遠くへ来たもので、地球の青い光は他の星々にまぎれて、肉眼ではどこにあるのかわからない。  船長は「まず、偵察隊を派遣します。危険な細菌がないか調査のうえ、皆さんが開拓する日を決定します。しばしのあいだ船内で待機しておいてください」  だが偵察隊が母船から発着して一分も立たない間に、先発隊の隊長から通信が入った。  「船長、大気圏内に浮遊する人工物があります!」  「なにっ! そんなバカな! ここには知的生命体はいないはずだぞ!」  「しかし、間違いありません!」  「もっと近付いてみろ!」  「はい! あれは……。ああああ!」  先発隊の隊長が悲鳴をあげた。  このただならない声に船内は凍り付いた。  なにかとんでもない事が惑星ディスカスで起きたようだ。  「どうした、画像を送れ! 画像を送ってみろ! 応答せよ! 応答せよ! どうした!」  しばし間があり、ようやく落ち着きを取り戻したらしい先発隊の隊長から応答があった。  「りょ……。了解」
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