24時のレクイエム

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それから1ヶ月後。 深夜勤務のバイト中。 並べた雑誌の点検中に知った。 「波多さん」 「ん?」 因みに波多さんは外を掃き掃除中。 だから、普通に話も聞いてくれる。 「自殺したあの人」 「あ?どの人?」 「24時きっちりの常連客」 「あぁ」 「作曲家だったんすね」 「へぇー」 あ、興味無さげだな。 売れない作曲家。 作った曲をネットに載せていたらしい。 暖烏一って名前で。 雑誌の隅っこ。スペース余ったから、くらいの小さいところにあったあの客の自殺の詳細。 部屋にあったパソコンには、売れないことへの苦悩が綴られており、コンビニと家の往復のみの生活だったらしい。 後、指のタトゥーは決意表明、とか。 音楽と結婚したかったのか? 「…何それ、バカらし」 鼻で笑った。 悲しくて泣けてくる。 俺、知ってたな。知ってたよ。 暖かい烏に一って何て読むんだ?って名前につられて、曲聞いたことあるし。 何なら、再生回数ほぼ俺じゃねぇの?ってくらい、謎にハマってた。 暖烏一って名前、当て字も当て字でさ。 「ナオハジメ」って知った時は、読めねー!って1人笑ったもん。 最近新曲出ねぇな、って思ってたんだよな。 「…そっか、次は無いのか」 あ、ナオハジメって、もしかしてNo.1だったりして。1位になるぞ、的な? 何か、絶対そうな気がしてきた。 「おい、和泉。何やって…って、うおっ!?」 外から帰ってきた波多さんがオロオロしている。 開いた雑誌にボタボタ涙を落とす俺。 「…ダメじゃね」 「いや、お前がな?!」 死んじゃったら終わりじゃね? 挽回も出来ねぇじゃん。 死んでんじゃねーよ。 あーぁ、暖烏一のせいで、コレ買い取りかよ。どうしてくれんだよ。 なぁ、暖烏一。 俺、あんたの曲、割と好きだったよ? 知ってたら声掛けたのにな。 コレ、どの組み合わせで食ってんの?って聞いてみたかった。 あんた、勿体無いことしたよ。 追いかけはしてないけど、次を待ってるやつなら、ちゃんとここにいたのに。 仕方ないから、もう暫くはあんたの曲聞いててやるよ。ついでに広めといてやる。 だから、バカなことした!って思いっきり悔しがれ。 俺の楽しみを奪った罰として。 俺からの弔いっつーことで。 それじゃ。
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