0人が本棚に入れています
本棚に追加
それから1ヶ月後。
深夜勤務のバイト中。
並べた雑誌の点検中に知った。
「波多さん」
「ん?」
因みに波多さんは外を掃き掃除中。
だから、普通に話も聞いてくれる。
「自殺したあの人」
「あ?どの人?」
「24時きっちりの常連客」
「あぁ」
「作曲家だったんすね」
「へぇー」
あ、興味無さげだな。
売れない作曲家。
作った曲をネットに載せていたらしい。
暖烏一って名前で。
雑誌の隅っこ。スペース余ったから、くらいの小さいところにあったあの客の自殺の詳細。
部屋にあったパソコンには、売れないことへの苦悩が綴られており、コンビニと家の往復のみの生活だったらしい。
後、指のタトゥーは決意表明、とか。
音楽と結婚したかったのか?
「…何それ、バカらし」
鼻で笑った。
悲しくて泣けてくる。
俺、知ってたな。知ってたよ。
暖かい烏に一って何て読むんだ?って名前につられて、曲聞いたことあるし。
何なら、再生回数ほぼ俺じゃねぇの?ってくらい、謎にハマってた。
暖烏一って名前、当て字も当て字でさ。
「ナオハジメ」って知った時は、読めねー!って1人笑ったもん。
最近新曲出ねぇな、って思ってたんだよな。
「…そっか、次は無いのか」
あ、ナオハジメって、もしかしてNo.1だったりして。1位になるぞ、的な?
何か、絶対そうな気がしてきた。
「おい、和泉。何やって…って、うおっ!?」
外から帰ってきた波多さんがオロオロしている。
開いた雑誌にボタボタ涙を落とす俺。
「…ダメじゃね」
「いや、お前がな?!」
死んじゃったら終わりじゃね?
挽回も出来ねぇじゃん。
死んでんじゃねーよ。
あーぁ、暖烏一のせいで、コレ買い取りかよ。どうしてくれんだよ。
なぁ、暖烏一。
俺、あんたの曲、割と好きだったよ?
知ってたら声掛けたのにな。
コレ、どの組み合わせで食ってんの?って聞いてみたかった。
あんた、勿体無いことしたよ。
追いかけはしてないけど、次を待ってるやつなら、ちゃんとここにいたのに。
仕方ないから、もう暫くはあんたの曲聞いててやるよ。ついでに広めといてやる。
だから、バカなことした!って思いっきり悔しがれ。
俺の楽しみを奪った罰として。
俺からの弔いっつーことで。
それじゃ。
最初のコメントを投稿しよう!