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唐揚げにメロンパン、納豆、コーラに、日替わりで買った今日の酒は、白ワインだった。
レジで支払いを済ませ、有料5円の袋に入れた商品を渡す。
そいつは気持ち程度に礼をして受け取ると、出て行った。
「ぁざっしたぁー」
客もいないしレジから見送って気付いた。
レジのカルトンに、取り忘れられた1円玉が転がっている。
あ、カルトンってお金置く水色の皿ね?
「…ぅわー」
マジかー、面倒臭ぇ。
でも最後採算が合わないともっと面倒だから追いかけたわけ。俺、偉い。
「お客様ぁー」
出て歩道を歩いてたからちょっと追いかけて後ろから声かけたんだけど、全然気付かねぇの。
しゃーなし、走って。
「お客様ぁー、えーっと…そこの訳分からん組み合わせのお客様ぁー?」
我ながら、何言ってんだ?と思った。
まぁ、店に来る度思ってたんだけど。
コンビニバイトなんぞに、客が買う物をズベコベ言う資格なんて無い。
買ってくれてありがとう、と感謝こそすれ。で、案の定、全然気付かれないし。
「すみません、お客様ぁ」
やっと追いついて、肩を叩いた。
ビクッと振り返った顔は、目がまん丸だった。
おれ?!って目で言ってる。
「お釣り、お忘れっした」
手の温度でぬるくなった1円玉を渡す。
「あぁ…ありがとう」
では、と頭を下げてコンビニへ。
「あの」
「はい?」
呼び止められた。
「訳分からん組み合わせ、ってこれ?」
ガサリとさっき買って行った袋を持ち上げた。
「あーはぁ…まぁ、はい。そっすね。俺的には意味分かんねぇ、っていつも思ってて。まぁ、でも個人の嗜好なんで」
じゃ、と戻ろうとすると、はははっ!と急に笑い出した。
ギョッとして振り返る。
涙目で笑うそいつがいた。
それであの顔か!って。
いや、どの顔?俺のこと?
「いやー、意外と旨いんだけどなぁ」
ありがとう、笑いを残してそう言うと、向かいのマンションへ去って行った。
「…いや、そこかよ」
24時の常連客は、コンビニ向かいのマンション在住だった。
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