マイ・カントリー・ロード

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 「えっ、今日迎えに来れないの?そういう事は早く言ってよもぅ…。分かっ    た。バスで帰るから。…お金?あるって。大丈夫だよ。…今日もカレー⁉︎  昨日もだったじゃん飽きたよ。…あーもう、分かったよ!」  通話を切って短くため息をついた。今日の不幸は三つ。一つ、部活がいつも   より早く終わってしまったこと。一つ、母さんに急用が出来て直ぐに家に帰  れない事。一つ、夕飯が二日連続でカレーな事。  「あ~あ、ついてない」  寄りかかっていた校門側の塀から体を離して、長い坂道を下っていく。照り  付けてくる夏の日差しを、頼りない右手で遮る。歩く途中外食してから帰ろ  うかとも考えたが、ここは田舎町の高校。コンビニも、暇つぶしが出来るよう  なオシャレなカフェもバスに暫く揺られなければたどり着けない。財布をチ  ラリと覗いてみる。…危うく帰れなくなる所だった。貧乏学生は寄り道すら  許されないらしい。  「バス停は確かこっち…あれか」  坂を下りて右手に、錆びついた停留所の標識とそれに似つかわしいベンチが  置いてある。いつもは母の送迎だったから、バス停を見るのは今日が初めま  してだ。オブラートに包むと流石田舎という感想しか出てこない。    「ありゃ、先客が居るや」   帰宅ラッシュの時間帯とズレているから、もしかしたら誰もいないのではと思っていたが、ウチの学校の制服を着た男子が一人、ベンチに座っていた。
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