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よりにもよって男子だという事に気まずさを感じながら、出来るだけ音をた
てないように隣に腰掛けた。向こうは私に気付いていない。どうやらイヤホ
ンで音楽を聴いているようで、先程からしきりに首を上げ下げしている。
「楽しそう…何聴いてるんだろう」
なんてしばらくは観察していたが、あんまり見すぎても失礼だと感じて目線
を正面にした。申し訳程度の風がそよいで、私の汗を落としに来る。恐ろし
い程に暑くて、恐ろしい程に暇だ。早くバスが迎えに来てくれないだろうか
と道路を見つめて念を送る。しかし空しい事にバスはおろか車一台通らな
い。穏やかな空、のどかな田畑の風景、楽しそうなお隣さん、一人ぼっちの
私。今だけは排気音が恋しい。
「花のJKライフがこんなんでいいのかね 」
少し大声で嫌味ったらしく叫んでみた丁度その時。
「カンチュローゥ!テーミホーォ!」
隣の男子が唐突に叫びだした。思わず見てしまう。相変わらず揺れているあ
たり、高揚して歌い始めてしまったのだろう。それにしてもひどく音痴だ。
曲も知らないし、音楽の成績が言い訳でもないけど、正規の音程で無い事は
嫌という程伝わってくる。そもそもどこの言語の歌だろうか。気になり始め
るとキリがない。恐る恐る、私はお隣さんの肩を突いた。
「…はい」
彼は恥ずかしがる様子も無く、イヤホンを片方だけ外してこちらを見た。邪
魔されたからか少し不機嫌そうだ。
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