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49・卑怯者と臆病者
僕は今でこそスマホを愛用しているけれど、まだガラケーも所持している。
何故か。とっくに電池も切れているはずのそれに、時々電話がかかってくるからだ。
曜日も時間帯もバラバラ。でも決まって、彼から電話がかかってくるときは潮の匂いがする。
そして僕が電話に出ると、彼は憂鬱そうな声音で僕に近況を尋ねるのだ。
今日シェアハウスで起こったこと。桂さんとの関係のこと。愉快な同居人のこと。僕はそんな他愛のない話を、彼に延々と語ってやる。
だけど最後には、必ずこう尋ねてやる。
「それで? 君はいつ帰ってくるの?」
波瑠君、さすがに可哀想なんだけど。
彼がその問いに答えることはない。僕の意地悪な質問に、無言で電話を切ってしまう。
本当に臆病なやつだと呆れながらも、僕も大概かと嗤って、また電話がかかってくるのを心待ちにするのだった。
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