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54・花嫁のプロポーズ
優しいおかげでとにかくモテる桂さんは、どうやら最近、幽霊の花嫁にプロポーズされているらしい。
結婚指輪を失くして泣いていたので、つい放っておけず一緒に探してやったのがきっかけだったのだとか。
「これがなかなかアグレッシブなお嬢さんでね、毎日青い薔薇を贈ってくるんだ。100本の薔薇の花束なんて、初めて実物を見たよ……」
「いっそ付き合ってみたらどう? それだけ熱烈に愛してくれる人はなかなか居ないよ」
紫苑さんが茶化せば、桂さんは心底げんなりとした顔になる。
「幽霊の寵愛なんてろくなものではないよ。きっと気付いたときにはあの世行きだろうね」
そうは言うものの、手酷くフるのではなく誠実に断り続けているのがなんとも彼らしい。だからこそ、彼女も諦めきれないのだろうけれど。
その翌日、隣室から桂さんの小さな悲鳴が聞こえてきて、僕は驚いて部屋を飛び出す。
頭を抱えている桂さんの後ろから部屋の中を覗き込めば、足の踏み場がないほどみっしりと青薔薇が詰まっていて、さすがに顔が引きつってしまうのだった。
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