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1 残念令嬢は婚約破棄宣言をする。
「ルパート・セイブリアン侯爵令息! 私リリー・アガスティヤは本日この場において貴殿との婚約破棄を宣言する!」
綺羅びやかなシャンデリアからキラキラと夢のように光が降り注ぐ王城のバル内で響き渡るその声は、オーケストラが次のダンスの為に向けて曲を切り替えようとした僅かな合間に響き渡った。
その場に居合わせた招待客の貴族達は勿論のこと、給仕係の侍従やメイド、果てはパーティの安全を守るための騎士達まで全員がその声を上げた人物に注目した。
オーケストラの指揮者は、まるでデパートのマネキンのように指揮棒を振り上げる直前の格好で固まり、楽団員達も其れに習うように動きをピタリと止める。
しん。と静まり返った人々が目にするのは、中央でダンスを今踊り終えたばかりの夜会服を着たイケメンの金髪の男性と、そのパートーナーの貴族女性。
そしてその二人に向かい真っ直ぐな視線と人差し指を向けるのは、夜会服を着た美しい男性・・・に見える女性。
国王の姪にして、この国の三大公爵家の1つ、アガスティヤ家の長女リリー・アガスティヤ公爵令嬢その人であった。
「リ、リリー? 今、なんて? しかもその恰好??」
薄い水色の夜会服を着た金髪碧眼のイケメン細マッチョが声を出したが、いかんせん顔色は真っ青で震え声なのでイマイチ格好がつかない。
そして其れに相対する男装の麗人は、男性用の艶のある紺色の夜会服を身に纏い、長く艶のある黒髪は首の後ろで一纏めにし、まるで舞台俳優のように堂々と胸を張り背筋を伸ばしており、顔には爽やかな笑顔まで浮かべている。
――うん、勝負あり。ヤローの負け――
その場の全員の気持ちが一つになった。
×××
「あー、ゴホン」
国王陛下のメチャクチャわざとらしい咳払いがこれでもかというくらい静かな空間に響き渡り、その場にいる全員の視線が王族席に座る陛下にサッと集まった・・・
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