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八
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めげない男、颯太は、先日、カバンを見つけ、床下に隠していたカバンの中から取りだしたものはサツマイモである。
颯太はその晩、最初に逃げた道を辿り、山の中で見つけた平地を探した。
ここだ。トイレをした場所だ。
平地を持ってきた鍬で耕し、小石を取り除き、手のひらより少し深めに掘り、サツマイモを植えました。
翌日の夜中にはパンのビニール袋に水を入れてサツマイモにかけた。
そのうち梅雨に入り、しばらく水の心配は不要になったが、念のため山に入った。
サツマイモから葉が出ていたので、枝を切り取り、少し離して、いくつかの枝を植えた。
確か110日から120日くらいで収穫できるはずだ。
これで腹が少しは満たされる。
ある日、颯太がいつものように山へ行き、サツマイモに水をかけていると、突然、背後から襲われ、地面にねじ伏せられ、取り押さえられました。
「おめぇ、不審な動きをしてやがると思ってつけてきたら、一体、なにしてやがる?」
その声は太郎の声でした。
颯太は逃げようと暴れていましたが、太郎だと気付いて動きを止めました。
颯太は罪人のように縄で縛り上げられ家まで連れ戻され、土間に押さえつけられました。
「逃げたりしねぇから、この縄をほどいてくれよ」
父ちゃんがうなずき、太郎に向けて顎をクイっと上げると、颯太は縄をほどかれました。颯太が腕を交互にさすりながら座っていると、父ちゃんから訊ねられました。
「五郎、おめぇ、山ん中で、いってぇなにしてたんだ?」
「お腹が空いたから」
「腹が空いたから、どうしたんだ?」
「だからイモを植えてたんだよ」
「イモ? なんだそりゃあ?」
「あと100日も待てば、土の中にイモができて、それを採って、湯がいて食べれば美味しいんだよ」
「そりゃあ、ほんとか?」
「ほんとだよ。たぶん」
「そんなことお侍に知られたりすれば、全部取り上げられてしまうじゃねぇか」
「だから誰にも知られないように山ん中で作ってたんだよ」
「おめぇ、それを独り占めをするつもりなのか?」
「そんなことしねぇよ。みんなで腹の足しになると思ったんだよ」
「怪しいもんだな」
「独り占めしたってどうしょうもないだろ。僕には家がないし、どこにも行くあてなんかないんだから」
「それもそうだな」
そこは簡単に颯太の言い分を信用してくれた。
ただし、集落の者から変な裏切りや密告があると大変なことになるから、これからの管理は太郎がすることになった。颯太は、「サツマイモの場所には立ち入り禁止だ」という。
颯太は渋々ながらも了承せざるをえなかった。
だがちょっと理不尽だと思い、颯太は我慢しきれずに叫んだ。
「こんなの不便なだけじゃねぇかぁ~! もとの時代に帰らせてくれ~!」
「なに訳のわかんねぇことばかり言ってんだ? 五郎は」
さて、その後、どうなったのか、だって。
史実にはなにも残されていません。
ただ、ある地域では、
「屁こき村」と呼ばれる村があったとか、なかったとか。
耳を澄ませてください。聞こえてきませんか?
「ただ不便なだけじゃねぇか。こんなの、あり? 僕の時代に戻してくれぇ~!」
てなことを言う颯太の叫び声が聞こえて参ります。
有名な武将に成り代わって歴史を変えようなどと、都合の良いことを考えちゃあいけません。
人生は「ゲーム」のように気に入らなければ「リセット」してやり直せば良い。
そんな都合の良いことなどありません。
過去は残されたまま生きていかなければならないのです。
「過去」を変えるのではなく、今日から「自分の未来」を良い方向で変えていきましょう。
あらっ。このままではブラックユーモアになってしまいますね。
なので付け足しときます。
ある日、颯太は土手から転げ落ちて元の時代に戻れたそうな。
颯太曰く、「戦のない国に生まれたことに感謝しなきゃ」と言ったそうな。知らんけど。
チャンチャン!
お後がよろしいようで。
クスッと笑っていただけたなら光栄です。
ではまたお会いしましょう。
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