8人が本棚に入れています
本棚に追加
味覚回復のお祝いでチョコプリンを仕込んだ僕は機嫌よく教会の方へ行くと、朝からある老女と目が合った。一瞬げっと思ったけれど、僕はすぐ笑顔を作って「おはようございます」とあいさつをする。半年もアンさんと暮らして一緒に仕事をするうちに、アンさんお得意の作り笑顔が僕も自然とできるようになっていた。
「ねえ最近あいつ見てないのよ」
「あいつ?」
定期ミサに訪れていたフィービさんが、帰りにぶっきらぼうな言い方で僕に伝えた。
「ジョシュアよ。先週まで来ていたでしょう」
「あぁ……そうえいば」
フィービさんの態度は相変わらずつっけんどんなままだ。アンさんには当たりはきついし、他の女性からもよく態度を注意されている。
それでも彼女は年が明けてからミサにたまに顔を出す様になった。最近はほぼ毎回出席していて熱心にお祈りを捧げているし、ボランティアにもたまに参加してくれる。
クリスマスの晩にキムさんたちに死ぬほど飲まされたとは聞いているけれど、どのようなやり取りがあったのかは僕たちは知らされていない。
けれど教会に顔を出すようになったということはフィービさんの心境に何らかの変化があったのだろう。僕はそれが良い変化であればいいと思った。
「あいつ私の分のお菓子まで持って帰るのよ!ずっと嫌だったのよ!来なくってせいせいするわ!」
「まぁまぁ……」
いや、お菓子が欲しいだけかもしれないなと思った僕はばれないように苦笑いする。
「でも急に来るのを止めるのも変な話よ」
「それはまぁそうですね」「それなら私たちで様子を見に行きましょうか?」
アンさんが幽霊のようにふっと現れた物だからフィービさんは驚いて叫んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!