11 異母兄弟

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11 異母兄弟

その日、なんだか風早家は慌ただしかった。 私がいつもの通りに朝食の御膳を取りに行くと… ん? あれは、竹の部屋??? 竹の部屋にメイド達が集まっていた。 私は御膳を置いて見に行く訳にも行かず、とりあえず松の部屋に戻った。 「風早さん、竹の部屋にメイドさん達集まって居ましたけど、何かあるんでしょうか?」 私はそう言って御膳を風早さんの前に置いた。 「あぁ… ちょっとな… 厄介な奴が帰ってくるのさ…」 風早さんは苦虫を噛み潰したような顔で言う。 こんな表情を彼がするのは珍しいのだ。 「えーと、厄介な人って…?」 私は尋ねる。 「…俺の兄だ。 と言っても、まぁ、異母兄弟だがな。」 「まぁ…! お兄さんが!? えーと、でも風早流は弟である風早さんが継いだんですよね? お兄さんは風早さんを恨んでいるんじゃ…」 私は言う。 当然の推測だ。 だが… 「それなら、それでやりやすいんだがな。 奴は何故か俺を可愛がっている…!」 風早さんが暗い顔で言う。 可愛いがってもらってるなら、良いじゃん! と、思ったが、風早さんは戸惑いの気持ちが大きいようだ。 それはそうだ。 妾の子で、弟で、風早流を継ぎ、それを恨まないなんて、よほどの器の大きい人なんだろうか…? 「メシ食ったら、着替えて兄の出迎えに行く。」 「わ、わ、わかりました!」 そして、玄関で待つ事15分ほど、一台の車が風早家に入ってきた。 中から金髪にサングラスの男の人が降りると… 「Hello 、everyone ! 元気かーい!?」 彼は陽気にそう言った。 な、な、なるほど… これが、風早家の長男坊… 「Oh! 誰このメイドちゃん? 可愛いじゃないかー?」 「香夜斗(かやと)。 彼女は新しい俺付きのメイドで初花だ。 竹の部屋を片付けて寝泊まりできるようにしてある。 今回は何泊なんだ…?」 「オー! ウイカ! Very Sweet ! 1泊2日だね。 ほら、僕も忙しいからねー。」 香夜斗さんは言う。 なんか… 不思議なノリの人だ… そして、香夜斗さんは竹の部屋に荷物を置き、その後、松の部屋にやってきた。 「なんだよ? 松の部屋は堅苦しいから来たくないって言ってただろ?」 「まぁね。 でも少し大事な話が。」 香夜斗さんはチラリと私を見る。 お邪魔だろうか? 「いや、居ていい。 大丈夫だ、そいつは口が堅い。」 「そう? まぁ、志道がそう言うならいいけどね。 随分気に入っているんだねぇ。」 「別に。 NYの生活はどうなんだ?」 風早さんが香夜斗さんに尋ねる。 「悪くないよー。 今度は新しいショーのフラワーアレンジメントを手がけるんだ。 和洋折衷みたいな感じでね。」 「そうか。」 どうやら、会話から察するに、香夜斗さんはNYでフラワーデザイナーをやっているようだ。
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